夜勤介護マンの日記
この記事は、夜勤介護マンが実際の介護現場で経験した出来事をもとに書いています。個人や施設が特定されないよう配慮しており、確認できていないことは書いていません。特定の利用者さんや職員を批判する目的の記事ではありません。夜勤の体制や対応の手順は施設によって異なります。
日付が変わるまでに10回以上。「オシッコ~」と呼ばれ続けた夜勤
Pトイレへ介助しても尿は出ない。それでも次の訴えを無視できない。夜勤者が立たされる板挟みの話
「オシッコ~」
夜勤中、部屋からその声が聞こえた。
ワイは居室へ行って、その方をPトイレへ介助した。座ってもらって、しばらく待つ。
尿は出なかった。
それでベッドへ戻す。布団を掛け直して、部屋を出る。ここまでは、夜勤をしている人間なら誰でもやっている、ごく普通の流れや。
問題はこの後やった。
しばらくすると、また同じ声が聞こえてくる。
「オシッコ~」
また行く。Pトイレへ介助する。座ってもらう。出ない。ベッドへ戻す。部屋を出る。しばらくして、また呼ばれる。
これが、日付が変わるまでに10回以上続いた夜があった。
この記事は、その回数の多さを自慢したり、大変やったと嘆いたりするためのものやない。
ワイが書き残しておきたいのは、その夜に自分が何を突き付けられていたか、という話や。尿が出なかったからといって次を断れるわけやない。かといって、呼ばれるたびに全部応じ続けることもできない。その間で、何回も判断を迫られる。
夜勤のしんどさというのは、体を動かす回数だけの話やないと思っている。
この記事で分かること
- Pトイレで尿が出なかったあとも、次の訴えを簡単に無視できない理由
- 同じ介助が日付をまたぐまで10回以上続いた夜に、何が起きていたか
- 一人への対応と、ほかの利用者さんへの対応がぶつかる瞬間
- 夜勤者が「どこまで付き合うか」を毎回迫られるということ
始まりは、いつもの「オシッコ~」だった
最初の一回は、何も特別なことやなかった。
夜勤中、部屋のほうから「オシッコ~」という声が聞こえてくる。これは夜勤をしていれば普通にあることや。トイレの訴えは、夜間にいちばん多い呼ばれ方のひとつやと思う。
ワイは居室へ向かった。Pトイレへ移ってもらう介助をする。
この介助自体は、手順としては決まったものや。声をかけて、体を起こして、支えて、移ってもらって、座位を安定させる。何度もやってきた動作やから、迷うところはない。
座ってもらって、待つ。
ここで出れば、それで終わりや。すっきりしてもらって、ベッドへ戻して、また次の仕事に移る。夜勤の中で何度も繰り返している、いつもの流れになるはずやった。
ただ、この時は尿が出なかった。
出ないこと自体は、そんなに珍しい話でもない。尿意を感じて呼んだけれど、実際に座ったら出なかった。人間の体やから、そういうことは起きる。
だからワイも、その場では特に何とも思っていなかったと思う。出なかったな、という程度や。
ベッドへ戻ってもらって、布団を掛け直して、部屋を出た。
この時点では、まだこの夜が何時間もこの往復に費やされることになるとは思っていない。ただの一回として処理して、次の仕事へ向かっただけやった。
出ていないのに、また同じ声が聞こえた
しばらくして、また声が聞こえた。
「オシッコ~」
さっきと同じ部屋、同じ言葉や。
ここで一瞬、頭をよぎるものがある。さっき行ったばかりやし、その時は出なかった。それやのに、また同じ訴えが出ている。
ただ、そこで「さっき出なかったから今回は行かんでええ」とはならへんかった。
理由は単純で、さっき出なかったことと、今この人が尿意を訴えていることは、別の話やからや。
一回目に出なかったのは事実や。でもそれは一回目の結果であって、二回目にも出ないという保証にはならない。時間が経てば体の状態は変わる。前が空振りやったから次も空振り、という理屈は成立しない。
それに、本人が言うている以上、こちらが勝手に「これは本当の尿意やない」と決めることもできない。ワイは本人の膀胱の中を見られるわけやない。訴えの真偽を判定する立場にもない。
だから、また行った。
Pトイレへ介助して、座ってもらって、待つ。
出ない。
ベッドへ戻して、布団を掛けて、部屋を出る。
そしてまた、しばらくすると同じ声が聞こえてくる。
この流れが、日付が変わるまでに10回以上続いた。
数字にしてしまうと「10回か」で終わってしまうかもしれん。ただ、その10回以上のあいだ、ワイはずっとこの部屋だけにいたわけやない。フロアには他にも利用者さんがいて、他の仕事も動いている。
そして、呼ばれるたびに、ワイは同じ場所で立ち止まることになった。
出なかった。だから次は行かんでええ。現場では、それほど簡単には割り切れへんかった。
かといって、訴えられるたびに同じ介助を続けていけば、今度は他の利用者さんへの対応が後ろへずれていく。
この夜に重かったのは、Pトイレ介助そのものだけやなかった。どこまで付き合うのかを、そのたびに突き付けられることやった。