夜勤中、なんとなく様子が違う利用者さんがおる。とりあえずパルスオキシメーターを持ってきて、指に挟む。

「98」と出る。介護の現場では、この数字を見て安心したくなる場面もあると思う。

ただ、その数字だけで安心してええんやろか。今日はSpO2の話を書く。夜勤中に普段との違いをどう拾うかについては、夜間巡視は寝顔確認だけじゃない、介護士が見ているポイントの記事でも詳しく書いとる。

 

SpO2とは何を測っとる数値なのか

          ※画像はイメージです(AI生成)

SpO2は、経皮的動脈血酸素飽和度のことや。血液の中を流れとるヘモグロビンのうち、どれくらいの割合が酸素と結びついとるかを、パーセントで表した数値になる。

パルスオキシメーターは、採血をせんと、皮膚を通してこのSpO2を測定できる機器や。指先に光を当てて、その光の吸収の違いから、酸素と結びついたヘモグロビンの比率を計算しとる。

介護施設でも、体温や血圧と並んでバイタルの一つとして測ることが多い。機種によっては脈拍も同時に出る。

数値の目安と、その目安が当てはまらん人

まず一般的な目安から書いとく。

SpO2の一般的な目安

  • 一般的に96〜99%が標準値とされとる
  • 90%以下の場合、十分な酸素を全身の臓器へ送れなくなった状態(呼吸不全)になっている可能性があり、適切な対応が必要とされとる
  • 慢性的に肺や心臓の病気がある人で、息苦しさや喘鳴などの症状が強くなり、SpO2が普段の値から3〜4%低下した場合は、かかりつけ医への連絡や受診が必要とされとる

出典:日本呼吸器学会「パルスオキシメーターとはどのようなものですか?」

そして、日本呼吸器学会でも、測定値の持つ意味はその人の状態やかかっとる病気によって違うため、数値の判断は主治医など医療の専門職の指導を仰ぐことが勧められとる。

ここで大事なんは、一般的な目安が、そのまま全員に当てはまるわけやないということや。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)など、慢性的に肺や心臓の病気がある人では、一般的な標準値と本人の普段の値が異なる場合がある。在宅酸素療法を受けとる人の場合は、酸素の流量によって数値が変わるから、医師から個別の基準値や指示が出とることもある。

⚠ 数字を上げたくて、酸素の流量を自己判断で変えたらあかん

SpO2の数字を一般的な96〜99%まで上げようとして、介護職や家族が自分の判断で酸素の流量を変更することは絶対にせんといてほしい。酸素の流量は、医師の指示、個別の指示書、施設の手順に沿って扱うものや。

一律の数字で線を引くんやなくて、その人の普段の値や、医師からの個別の指示を知っとるかどうか。そこが介護職の側で一番大事になる。

介護職の役割は、数値で判断することやない

ここははっきり書いておきたい。

介護職がやらんことは、病名の診断、SpO2が下がっとる原因の特定、治療方針の決定、そして酸素流量の自己判断での変更や。ここは医療職の役割になる。

介護職と医療職の役割の境界をもう少し広く整理した内容は、介護職と医療行為の線引きとは?できること・原則できないことを解説の記事にまとめとる。

介護職がやることは、測定、本人の様子の観察、普段との比較、変化への気づき、施設の手順に沿った報告、そして明らかな緊急時には迅速な対応や。

数値を見て診断するんやなくて、「いつもと違う」という事実に気づいて、必要な対応につなげる。それが介護職の役割やとワイは思っとる。

SpO2と一緒に見るもの

数値だけを見て終わりにすると、拾えるはずの変化を落とす。

測るときには、こういうところも一緒に見ておきたい。

SpO2と一緒に確認したいこと

  • 呼吸が苦しそうにしていないか
  • 呼吸の回数、呼吸の仕方に普段との違いはないか
  • 顔色、唇の色に変化はないか
  • 意識の状態、反応の仕方はどうか
  • 発熱など、他のバイタルに変化はないか
  • 普段と比べて、活気や食事の様子はどうか

数値が保たれとっても、明らかに息が苦しそうやったり、顔色が悪かったりする場面はある。逆に、数字は下がっとるけど本人はケロッとしとる、ということもある。

そして、数値が正常に見えても油断できん場合もある。貧血でヘモグロビンそのものが少ない人では、SpO2が正常に見えても、身体に届く酸素の量が足りていない場合があるとされとる。SpO2は「酸素と結びついた割合」を見とる数値であって、酸素の総量を見とるわけやない。

数値と目の前の様子、両方を持って初めて報告になる。片方だけやと、受け取る看護師の側も判断しづらい。呼吸や全身状態の変化を継続して見る場面については、ターミナルケアの現場で介護職が見てきた最期の観察と報告の記事でも実体験を書いとる。

測定するときの注意点

もう一つ知っといてほしいのが、測り方によって数値がおかしくなることがあるということや。

ただ、その話をする前に、一つだけ先に書いておきたいことがある。

⚠ 明らかな緊急症状があるときは、測り直しを優先せん

強い呼吸困難、息ができひんくらい苦しそう、明らかな顔色や唇の変化、反応がおかしい、意識の状態が悪い。こういう症状が本人にあるときは、「まず測り直してみよう」を最初の行動にしたらあかん。施設の緊急時手順に沿って、看護師・医師への緊急連絡や、必要なら119番通報を含めた対応を優先する。

これから書く測り直しの話は、本人の状態が明らかに悪いわけやなく、測定の誤差を疑える状況に限った話や。

参考:総務省消防庁「救急車を上手に使いましょう」

⚠ 数値が正しく出ん場面

指先が冷えとると、血の巡りが悪くなって正しく測れんことがある。冬場の夜間なんかは、特に起こりやすい条件の一つや。

測定中に手が動いとる場合も、数値が安定せん。認知症があって、じっとしとくのが難しい方の場合はここで苦労する。

それから、マニキュアが塗ってあると光の吸収に影響する可能性があるとされとる。爪の状態も見ておきたい。

機種によっては、脈波が波形で表示される。表示がある機種なら、その波形がきちんと出とるかどうかも、測定が安定しとるかを確認する材料になる。使い方の詳細は、機種の取扱説明書を確認してほしい。

それと、SpO2は装着した直後やなく、脈拍が安定する20〜30秒後を目安に数値を読む。日本呼吸器学会でもそう案内されとる。挟んだ瞬間の数字だけで判断せんようにしたい。

本人の状態が明らかに悪いわけやなく、数値だけがいつもと違う、という状況であれば、測定の誤差を疑ってみる余地がある。指を温めてから測り直す、別の指で測ってみる。そのひと手間で変わることは、実際にある。

報告するときに伝えたいこと

看護師へ報告するとき、数値だけを伝えるのはもったいない。

「SpO2が92でした」だけやと、受け取る側は判断材料が足りん。そこに、こういう情報が乗ると全然違ってくる。

いつ測ったのか。普段は何%くらいの人なのか。測ったとき指は冷えてへんかったか。手は動いてへんかったか。何回測ってその数字やったのか。そして、呼吸や顔色、意識の様子はどうやったか。

ここまで揃うと、医療職の側も次の判断がしやすくなる。

そして、報告の基準は施設ごとに決まっとることが多い。何%を下回ったら報告するのか、その利用者さんの場合はどうなのか。自分で勝手に基準を作らず、職場のルールとその人の指示内容を確認しておいてほしい。