夜勤介護マンの日記

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高齢者の低ナトリウム血症とは?ぼんやり・ふらつき・意識変化を介護職が見逃さないために

高齢者の低ナトリウム血症とは?ぼんやり・ふらつき・意識変化を介護職が見逃さないために

夜勤の巡視でも、日中の食事介助でも、高齢者が急にぼんやりしていることがあります。声をかけても反応が薄い、受け答えがかみ合わない、いつもなら歩ける距離でふらつく。介護の現場では、そう珍しい場面ではありません。

ただ、その原因は見た目だけでは決まりません。認知症の影響、単なる眠気や疲れ、感染症、脱水、低血糖、脳血管障害。可能性はいくつも並びますし、どれか一つに絞り込める材料が、その場にそろっていることのほうが少ない。

その並びのなかに、低ナトリウム血症という状態もあります。血液中のナトリウムの濃度が下がった状態で、高齢者では決して縁遠い話ではない一方、外から見て分かるものではありません。

先に結論を書いておきます。低ナトリウム血症は血液検査で確認する状態であって、介護職が症状や見た目から診断することはできません。そこは医療職の領域です。

それでも、介護職にできることはあります。急にぼんやりする、いつもにはないふらつきが出る、強い眠気がある、吐き気や嘔吐がある。こうした変化に最初に気づくのは、その人の普段を知っている職員であることが多いからです。いつからなのか、普段と何が違うのか、どの程度変わっているのか、ほかにどんな症状や背景があるのか。ここを具体的にして医療職へつなぐところまでが、介護職の持ち場になります。

この記事では、低ナトリウム血症の基本、高齢者で原因が複雑になりやすい理由、見逃したくない変化、観察と報告の中身、そして介護職が自己判断でしてはいけないことを、順番に整理していきます。

この記事は、介護職や介護に関わる方へ向けた一般的な情報としてまとめたものです。診断や治療の代わりになるものではありません。

急な意識の変化、けいれん、呼吸状態の異常などが見られる場合は、記事を読み進めるより先に、施設の緊急対応手順に従って看護師や医師、必要に応じて救急へつないでください。個別の対応は、その方の状態を実際に確認できる医療職の判断によります。

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この記事で分かること

  • 低ナトリウム血症とはどのような状態か
  • 高齢者で原因が複数重なりやすい理由
  • 介護職が気づきたい変化と、その見方
  • 医療職へ伝えたい観察項目
  • 緊急性が高いサイン
  • 介護職が自己判断でしてはいけないこと

高齢者の低ナトリウム血症とは

まずは、低ナトリウム血症がどういう状態を指すのかを整理しておきます。名前が長いので身構えてしまいますが、押さえるところは多くありません。

血清ナトリウムが135mmol/L未満の状態

ナトリウムは、体の中の水分バランスや、神経や筋肉の働きに関わっています。体液のなかに溶けていて、血液検査ではその濃度が測られます。

低ナトリウム血症は、一般に血清ナトリウム濃度が135mmol/L未満になった状態と定義されています。この数字を介護職が暗記しておく必要はありませんが、濃度で定義されている状態であるという点だけは押さえておくと、このあとの説明がつながりやすくなります。

もう一つ知っておきたいのは、同じ数値でも緊急性が同じとは限らないことです。どのくらいの速さで下がったのか、どんな症状が出ているのか。そこによって、医療職の受け止め方は変わります。数値だけを聞いて「低いから危ない」「そこまで低くないから大丈夫」と介護職の側で線を引ける話ではない、ということでもあります。

では、なぜ介護職が知っておく意味があるのか。採血の結果が出るのは、誰かが「いつもと違う」と気づいて医療職へ伝えたあとだからです。順番としては、現場の気づきが先に来ることがあります。

「塩分が足りない病気」とは限らない

低ナトリウム血症と聞くと、塩分が足りない状態を思い浮かべる人が多いと思います。ただ、この理解は正確ではありません。

濃度というのは、溶けているものの量と、溶かしている水分の量の関係で決まります。ナトリウムの量が変わらなくても、水分のほうが増えれば濃度は下がる。つまり低ナトリウム血症は、体内のナトリウムが単純に不足している状態とは限らず、血液中のナトリウムに対して水分が相対的に多くなっている状態として理解する必要があります。

ここを取り違えると、「塩を足せば戻るのでは」という発想になります。あとの見出しで詳しく書きますが、原因によっては、その対応がまったく的外れになることもあります。逆に、水分を減らせばいいという単純な話にもなりません。

症状だけで低ナトリウム血症とは判断できない

低ナトリウム血症で見られ得る変化は、ぼんやりする、ふらつく、吐き気がある、頭が痛い、眠気が強いといったものです。並べてみると分かるとおり、どれも低ナトリウム血症に限った症状ではありません。

確認するには血液検査が必要で、そのうえで医療職が体の状態を評価します。外見からは分かりませんし、バイタルサインを測っても、それだけで確定にも除外にもなりません。

介護現場歴20年の現役介護職として書きますが、ここは無理に踏み込むところやないと思っています。介護職が担えるのは、その人の普段を知っている立場から変化に気づいて、確認できた事実を医療職へ渡すこと。診断は、検査と評価の手段を持っている人の仕事です。役割を分けたほうが、結果として本人にとって早い対応につながります。

出典:日本内科学会雑誌「低ナトリウム血症~その病態に基づいた鑑別診断~」(2022年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/111/5/111_902/_article/-char/ja/

高齢者では低ナトリウム血症の原因が重なりやすい

次に、なぜ高齢者で注意が向けられるのかを見ていきます。ここが分かると、「水の飲みすぎやろ」という単純な決めつけから距離を取れます。

加齢だけでなく病気・薬剤・摂取状況が重なる

高齢になると、体の中の水分を調節する働きが若い頃と同じようには動かなくなることがあります。腎臓での水分の排泄や、ホルモンによる調節が影響を受け得る、という説明が医学の資料でも扱われています。

ただ、話はそこで終わりません。高齢者の場合、持病が一つとは限らず、服用している薬も複数あることが多い。加えて、体調を崩して食事量が落ちている、嘔吐や下痢が続いている、暑い時期で汗をかいている、といった日々の状況も重なります。

低ナトリウム血症につながり得る背景を、一人が同時にいくつも持っている。これが高齢者の難しさです。だから原因を一つに決めることができませんし、決めようとすること自体が的外れになります。

介護職の側で「この人は水をよく飲むから」「この薬を飲んでいるから」と原因を当てにいくと、そこで思考が止まります。実際には、いくつかの要素が重なっているかもしれない。原因を絞るのは医療職の仕事で、介護職は背景になりそうな情報を落とさずに渡す側に立ちます。

症状が目立たず採血で分かることもある

低ナトリウム血症は、必ずしも派手な変化を伴うわけではありません。ゆっくり進んだ場合、体がその状態にある程度慣れてしまい、症状が分かりにくいことがあります。

定期的な採血や、別の目的で行われた検査で見つかる場合もある。つまり、見た目が普段どおりだから低ナトリウム血症ではない、とは言えないわけです。

これは介護職にとっては、少しやりにくい話です。分かりやすい変化がなければ気づきようがないからです。ただ、逆に言えば、はっきりした症状が出ていない段階での発見は医療職の検査に委ねられていて、そこは介護職が背負う部分ではない、とも考えられます。

軽度でも「何も問題がない」とは限らない

もう一つ、慢性的に軽い低ナトリウム血症が続いている状態について、認知機能の低下、転倒、骨折、ADLや生命予後の悪化との関連が報告されています。

ここは書き方に注意が必要な部分です。関連が報告されているというのは、低ナトリウム血症が必ずそれらを直接引き起こす、という意味ではありません。因果関係を断定できる話として扱ってはいけないところです。

そのうえで、介護職の実務に引き寄せると、意味のある情報にはなります。最近ふらつきが増えた、歩くときに不安定になった、転倒が続いている、日中の反応が以前より鈍い。こうした生活上の変化を記録して共有しておくと、医療職が体の状態を見直すときの材料になり得ます。転倒を「足腰が弱ってきたから」だけで説明し切らずに残しておく、という程度の意識です。

出典:日本内科学会雑誌「高齢者の低Na血症と水代謝異常」(2013年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/7/102_1807/_pdf

低ナトリウム血症は「水の飲みすぎ」だけで起こるのではない

ここからは、原因の幅を整理します。介護現場では「水分をとりすぎたんちゃうか」という説明で片づけられることがありますが、実際にはそれだけではありません。

大きな入り口は二つあります。ひとつは、体に入った水分を十分に外へ出せない状態。もうひとつは、水分の摂取量が体の排泄能力を上回る状態です。そして、体液の量そのものが減っている場合、ほぼ正常に見える場合、増えている場合とで、背景の考え方も分かれます。

水分を十分に排泄できない場合

体には、尿として出す水分の量を調節する仕組みがあります。その調節に関わるものの一つが、抗利尿ホルモンと呼ばれるものです。名前のとおり、尿を出しにくくする方向に働きます。

このホルモンの働きが、体の状態に合わないまま不適切に続いてしまう病態があり、SIADHと呼ばれています。ごく平たく言えば、体内の水分を外へ出しにくくする働きが不適切に続いている状態です。水分がたまりやすくなるため、血液中のナトリウム濃度は相対的に下がります。

ほかにも、腎臓の病気、副腎や甲状腺に関係する病気などが、水分やナトリウムの調節に関わることがあります。ここは介護職が見分けられる領域ではありませんし、見分ける必要もありません。「体の外へ水を出す働きの側に問題がある場合もある」という枠組みだけ持っておけば十分やと思います。

嘔吐・下痢・発汗などでナトリウムを失う場合

嘔吐や下痢が続くと、水分と一緒にナトリウムも失われます。大量の発汗や、利尿薬などによってナトリウムが失われることもあります。

ここで誤解しやすいのが、脱水との関係です。脱水があるから血液が濃くなって、ナトリウム濃度も上がるはずだ、と考えてしまいがちですが、そう単純ではありません。体液が減っている状態でも低ナトリウム血症は起こり得ます。失われているのは水分だけではないからです。

介護職が記録できるのは、嘔吐が何回あったか、下痢が続いているか、便の性状はどうか、発熱があるか、大量に汗をかいていないか、といった確認できる範囲の情報です。そこから濃度がどうなっているかを推測することはできませんが、医療職が状態を考えるときには必要な材料になります。

心不全などで体内に水分がたまる場合

逆に、体液の量そのものが増えているタイプもあります。心不全、肝硬変、腎臓の病気などが背景になる場合です。

心不全については別の記事で詳しく書いているのでここでは深入りしませんが、押さえておきたいのは一点です。体に水分がたまっている状態でも、血液中のナトリウム濃度は下がり得る。むくみがあるからナトリウムは足りている、という読み方はできません。

利尿薬など薬剤が関係する場合

薬剤が関係することもあります。利尿薬をはじめ、いくつかの薬が体の水分やナトリウムの調節に影響し得ることが知られています。

ここで書かないでおくことを、先に明記しておきます。特定の薬剤名を並べることも、その薬を止めたほうがいいと示すことも、この記事ではしません。処方は医師の判断で行われていて、その薬が本人にとって必要だから出ています。

介護職ができるのは、記録で確認できる範囲の情報を拾うことです。最近新しく始まった薬があるか、量や種類が変わったタイミングはあるか。「薬が原因やと思います」と伝えるのではなく、「この日から薬が変わっています」という事実として渡します。判断はそこから先です。

水分摂取が排泄能力を上回る場合

もちろん、水分の摂取そのものが背景になることもあります。体が排泄できる量を超えて水分が入れば、血液中のナトリウムは相対的に薄まります。

ただし、「何リットル飲めば低ナトリウム血症になる」という一律の線を引くことはできません。排泄できる量は、その人の腎臓の働きや病気、薬、食事の内容によって変わるからです。同じ量を飲んでも、体の側の条件が違えば結果は変わります。

だから、水分を多くとっている人を見たときに「この人は危ない」と決めることも、逆に「そんなに飲んでいないから関係ない」と外すこともできません。摂取量は、あくまで報告に添える情報の一つとして扱います。

水中毒と低ナトリウム血症を同じ意味にしない

介護現場では、水中毒という言葉を聞くことがあります。多量の水分摂取によって体調をくずす状態を指して使われることが多い言葉です。

一方、低ナトリウム血症は、血液検査で確認される状態の名前です。重なる場面はありますが、二つは同じ言葉ではありません。水中毒という言い方で理解していると、大量に水を飲んでいない人の低ナトリウム血症が視界から外れてしまいます。

ここまでの内容を、介護職の立場で確認できることと、できないことに分けて並べておきます。表は横にスクロールできます。

大まかな背景 起こり得る状況 介護職が確認できる情報 介護職だけでは判断できないこと
嘔吐・下痢・発汗 体調不良が続いている、暑い環境で汗をかいている 嘔吐や下痢の回数と性状、発熱の有無、発汗の様子、いつからか 体液やナトリウムがどの程度失われているか
水分摂取量の増加 普段より飲水量が多い状態が続いている 記録上分かる飲水量、飲み方の変化、いつからその傾向か その量がその人の排泄能力を超えているかどうか
食事摂取量の低下 食事が進まない日が続いている 主食副食の摂取量、食事にかかる時間、拒否の有無 食事内容が体の状態へどう影響しているか
利尿薬などの薬剤 薬が新しく始まった、種類や量が変わった 記録で確認できる開始日や変更日、変更前後の様子の違い その薬が今の状態に関係しているかどうか
心不全・肝疾患・腎疾患 もともとの持病として記録されている 記録上の既往、むくみや体重の変化、活動性の変化 病状が今どう動いているか、検査値との関係
水分を排泄しにくい病態(SIADHなど) 体の調節の働きに関係する状態がある 普段との違い、意識や会話の変化、尿の回数の記録 そうした病態があるかどうかの評価そのもの

※この表は原因を見分けるためのものではなく、報告時に添えられる情報を整理するためのものです。

表の右端の列を見てもらうと分かりますが、判断にあたる部分はほぼすべて医療職の側にあります。介護職が持っているのは左寄りの列、つまり日々の記録と、その人の普段を知っているという情報です。そこを丁寧に渡すほど、医療職の側は考えやすくなります。

出典:日本内科学会雑誌「低ナトリウム血症~その病態に基づいた鑑別診断~」(2022年・PDF)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/111/5/111_902/_pdf

ぼんやり・ふらつき・意識変化をどう見るか

ここからは、本人に現れ得る変化の話です。原因の話とは分けて読んでください。原因が違っても、現れる変化は似た形になることがあります。

初期や慢性では変化が分かりにくいことがある

症状の出方は、ナトリウムの値だけで決まるわけではありません。どのくらいの速さで下がったかが関係します。

ゆっくり時間をかけて下がった場合、体がその状態にある程度適応するため、変化が目立たないことがあります。逆に短時間で下がった場合は、同じくらいの値でも症状が強く出ることがある。数値だけを比べても、その人にどう出ているかは分からない、ということです。

介護職の側から見ると、これはやっかいです。はっきりした症状がないまま経過していることがあるからです。だからこそ、日々の記録に残っている「普段の状態」が意味を持ってきます。比べる基準がなければ、少しの変化は変化として認識されません。

ぼんやりやふらつきだけでは病名を決められない

ぼんやりしている、反応が鈍い、ふらつく。この三つは、介護現場で毎日のように使われる表現ですが、どれも特定の病気を指すものではありません。

低ナトリウム血症でも起こり得ますし、感染症でも、脱水でも、低血糖でも、薬の影響でも、脳の病気でも起こり得ます。だから「ふらつき=低ナトリウム血症」という結び付け方はできません。

そのうえで、介護職が持ち込める情報があります。普段の覚醒状態と比べてどうか。普段の歩行や移乗と比べてどうか。普段の会話や受け答えと比べてどうか。病名の推測ではなく、この比較こそが現場から出せるものです。同じ「ふらつきあり」でも、普段は独歩できていた人の話なのか、もともと不安定だった人がさらに崩れた話なのかで、受け取る側の見方は変わります。

錯乱・吐き気・頭痛などの変化

もう少し踏み込んだ変化もあります。欧州のガイドラインをもとにした日本内科学会の資料では、中等度の症状として、嘔吐を伴わない吐き気、錯乱、頭痛が挙げられています。

錯乱というのは、言葉としては強く聞こえますが、現場で見える形はもっと地味なことがあります。話のつじつまが合わない、今どこにいるのか分からなくなっている、落ち着きなく同じことを繰り返す。普段の様子を知らない人が見ても分からないぶん、担当職員の気づきが効いてくる部分です。

頭痛や吐き気は、本人が言葉で伝えられれば拾いやすい情報です。ただ、うまく訴えられない方もいます。その場合でも、食事が進まない、こめかみのあたりを触っている、しかめ面が続いている、いつもの姿勢と違うといった形で出ることがあります。言葉がなければ情報がない、ということにはなりません。

深い傾眠・けいれん・昏睡は緊急性が高い

重い症状としては、嘔吐、心臓や呼吸の状態の異常、異常に深い眠気、けいれん、昏睡などが挙げられています。

ここまで来ると、低ナトリウム血症かどうかを考えている場合ではありません。原因が何であっても、そうした状態そのものが急ぐべきものです。病名を当てようとして時間を使うより、先に人を呼び、施設の手順に沿って動くほうが先になります。

そして、軽い症状から必ず順番に重くなるとも限りません。今日はぼんやりしている程度だったから明日も同じ、という前提は置かないほうがいい。変化が続いているのか、悪くなってきているのかを見ておく必要があります。

出典:日本内科学会雑誌「低ナトリウム血症性脳症」(2016年)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/4/105_667/_pdf
European Society of Endocrinology「Clinical guideline for the management of hyponatraemia」https://www.ese-hormones.org/publications/directory/ese-clinical-guideline-for-the-management-of-hyponatraemia/

「認知症が進んだ」「高齢だから」で片付けてはいけない

介護現場でいちばん引っかかりやすいのが、ここやと思います。反応が鈍い、話がかみ合わない、日中うとうとしている。認知症のある方であれば、その延長として受け取られやすい変化ばかりです。

急な変化と長期的な変化を分けて考える

手がかりになるのは、変化の速さです。

数か月かけて少しずつ見られるようになった変化と、数時間から数日のあいだに大きく変わった変化とでは、考える方向が違ってきます。急に現れた認知や注意、反応の変化は、体の状態が動いているときにも起こり得ます。

ここで介護職が認知症かどうかを見分ける必要はありません。見分けられるとも書けません。ただ、「昨日までできていたことが今日できない」という時間の情報は、誰よりも先に持てる立場にあります。

病名より「普段との違い」を報告する

報告するときに、原因を推測して伝える必要はありません。むしろ推測が先に立つと、受け取る側の視野を狭めてしまうことがあります。

伝えたいのは、最後に普段どおりだった時刻と、変化に気づいた時刻。そのあいだに何があったか、何が違うのか。会話の様子、覚醒の状態、動作の様子。同じ職員が以前見ていた姿と、今日の姿の差です。

ほかの職員からの情報も合わせると、より正確になります。夜勤帯の様子と日中の様子では見えているものが違いますし、自分が見ていない時間帯の情報が、変化の始まりを教えてくれることもあります。

認知症がある人でも身体異常は起こる

当たり前の話ですが、認知症があるからといって、体の異常が起きにくくなるわけではありません。低血糖、感染症、脱水、脳血管障害、薬剤の影響。可能性はそのまま残っています。

それに、認知症のある方は自分の不調を言葉で伝えにくい場合があります。ただ、これを「訴えられない人」と一括りにするのは違うと思っています。言葉が出にくくても、表情、姿勢、食事のとり方、眠り方、動きの滑らかさなど、本人はいろいろな形で状態を示しています。

むしろ、認知症がある人ほど、普段を知っている職員の比較情報が効いてきます。初めて会う人には「今の状態」しか見えません。普段との差を出せるのは、日々そばにいる人だけです。ここは介護職の情報が、いちばん代えのきかない場面やと思います。

介護職が観察して医療職へ伝えたいこと

ここからは実務の話です。「なんとなくぼんやりしている」という一言では、受け取った医療職が動きにくい。かといって、介護職が医学的な評価をする必要もありません。その間にあるのが、確認できた事実を具体的に並べる作業です。

なお、以下の確認は、それぞれの職場で介護職に許可されている範囲と、施設で決められた手順のなかで行ってください。

最後に普段どおりだった時刻と変化に気づいた時刻

まず押さえたいのが時間です。変化に気づいた時刻はもちろんですが、それと同じくらい、最後に普段どおりだった時刻が意味を持ちます。

朝食のときは普通に食べていた、昼の巡視では会話が成立していた、夕方の離床のときにはもう反応が薄かった。この幅があると、どのくらいの時間で変わったのかが見えてきます。「今日はずっとおかしい」という表現では、その幅が分かりません。

意識・反応・会話の変化

呼びかけに対してどう反応するか。目を開けられるか。返答の内容が普段と合っているか。会話が成り立つか。ろれつや言葉の出方に急な変化がないか。

ここは、普段の状態と並べて書くと伝わりやすくなります。普段は名前を呼べば目を開けて短く返事をする方が、今日は肩に触れないと反応しない。この形なら、読んだ人が差を把握できます。

歩行・立位・移乗の変化

座位が保てているか、立位が普段どおりか、歩行や移乗に違いがないか。普段は見守りで歩けていた人がふらつく、いつもの移乗で崩れそうになる、といった変化です。

あわせて、転倒や転落がなかったかも確認します。すでに転んでいる場合、その情報は必ず添えてください。頭を打っている可能性があるなら、なおさら扱いが変わります。

食事・水分摂取の変化

食事がどれくらい食べられているか、いつから落ちているか。水分の摂取量に変化はないか。飲む量が急に増えていないか、逆にほとんど飲めていないか。

記録に残っている範囲で構いません。正確な数字が出せない場合は、出せないことも含めて伝えるほうが、あとの判断を狂わせずに済みます。

尿・便・嘔吐・発汗などの情報

尿の回数や量について、記録上分かる範囲で確認します。下痢が続いていないか、嘔吐がなかったか、発熱はないか、大量の発汗がなかったか。

気をつけたいのは、こうした情報から原因を推測しないことです。尿量が少ない、体重が増えた、という材料だけで背景を決めることはできません。事実として並べるところで止めます。

薬剤の開始・変更と既往情報

新しく始まった薬があるか、量や種類が変わったタイミングがあるか。これらは記録で確認できる情報だけを使ってください。記憶や推測で書くと、そのまま誤情報になります。

既往についても同じです。心不全、肝疾患、腎疾患などが記録にあるなら、その事実を添えます。ただし「持病があるからこれが原因では」という付け足しは不要です。

バイタルサインと安全確保

測定できる場合は、体温、血圧、脈拍、SpO2を確認します。測ったときの姿勢や、安静時か動作後かも添えると条件がそろいます。

ここで大事な前提が一つあります。バイタルサインが普段どおりでも、低ナトリウム血症を否定することはできません。脳卒中など、ほかの緊急性の高い病気を除外できるわけでもない。数値が正常範囲に見えることを、様子見の理由にしないでください。

そして観察と同時に、安全の確保も進めます。ふらつきがあるなら単独での歩行を避ける、ベッド周囲を整える、必要に応じてそばを離れない。連絡と安全確保は、どちらかを選ぶものではなく並行して行うものです。

病名ではなく確認できた事実を伝える

報告のときに「低ナトリウム血症かもしれません」と伝える必要はありません。伝えるべきは、確認できた事実です。

いつまで普段どおりだったか、いつ何に気づいたか、何がどう違うか、ほかにどんな情報があるか。この形で渡せば、受け取った医療職はそこから考えられます。逆に病名を先に出すと、そこに引っ張られてしまうこともあります。

以下は、報告前に手元で確認するためのチェックリストです。全部が埋まらないこともありますが、埋まらなかった項目は「分からない」と伝えれば十分です。

A.時刻と経過

  • 最後に普段どおりだった時刻
  • 変化に気づいた時刻
  • 変化が続いているか、悪化しているか

B.意識・会話・動作

  • 呼びかけに対する反応
  • 開眼できるか
  • 返答内容が普段と合っているか、会話が成立するか
  • ろれつや言葉の出方に急な変化がないか
  • 座位、立位、歩行、移乗が普段と違わないか
  • 転倒や転落がなかったか
  • 頭痛、吐き気、嘔吐などの訴えがあるか

C.摂取・排泄・体調

  • 食事摂取量と、その変化がいつからか
  • 水分摂取量と、その変化がいつからか
  • 嘔吐や下痢の有無、回数、性状
  • 発熱や多量の発汗がないか
  • 尿回数や尿量について、記録上分かる範囲

D.薬剤・既往・バイタル

  • 新しく開始、または変更された薬があるか(記録で確認できる範囲)
  • 既知の心不全、肝疾患、腎疾患などの記載
  • 測定可能な場合の体温、血圧、脈拍、SpO2
  • 測定時の姿勢と、安静時か動作後かの条件

このチェックリストは、原因を絞り込むためのものではありません。医療職が状態を評価するときに必要になりやすい情報を、抜けなく持っていくためのものです。並べた項目のうち、どれが決め手になるかは、その場では分かりません。だからこそ、拾えるものは拾っておきます。

すぐに医療職へつなぎたい緊急性の高い変化

ここまでは、通常の観察と報告の話でした。ここからは、順番を変えて動く場面に絞ります。

病名が分からなくても緊急性は判断できる

低ナトリウム血症かどうかは、その場では分かりません。ただ、目の前の状態が急ぐものかどうかは、病名が分からなくても見えます。

  • 意識の状態が明らかに普段と違う、呼びかけへの反応が乏しい
  • 異常に深い眠気があり、覚醒しにくい
  • けいれんが見られる
  • 呼びかけても目を開けず、反応がない
  • 嘔吐を繰り返している
  • 呼吸や脈の状態に異常がある
  • 短時間で状態が悪くなってきている
  • 転倒や頭部の打撲を伴っている

これらは、原因が低ナトリウム血症であってもなくても急ぐ状態です。病名を考える手前で連絡へ動く、という順番になります。

意識・けいれん・呼吸の異常は迅速につなぐ

連絡先や連絡の順番は、施設の種別や時間帯、その方の状態によって変わります。看護師へつなぐのか、管理者を通すのか、協力医療機関へ連絡するのか、救急要請まで進むのか。ここは施設ごとに決められた緊急対応手順に従ってください。

この記事で一律の基準を示すことはできませんし、示すべきでもないと思っています。書けるのは、迷ったときに連絡が遅れるほうが問題になりやすい、というところまでです。

また、介護職が治療を始めるわけではありません。連絡と、許可された範囲での安全確保。ここが担当する部分です。転倒しないようにそばにいる、ベッド周囲を整える、一人で歩かせない、体位を安全な形に保つ。指示を待つあいだにできることは残っています。

夜勤帯でも「朝まで様子を見る」と決めつけない

夜勤の時間帯は、判断が重くなります。人が少なく、医療職がその場にいないことも多い。連絡すること自体に気を使う場面もあると思います。

ただ、朝まで様子を見ると最初から決めてしまうと、そのあいだに変化が進んでも確認する機会がなくなります。様子を見るという選択をするにしても、何をどの間隔で確認するのか、どうなったら連絡するのかを決めておくかどうかで中身が変わります。

ここも施設の手順が優先です。夜間の連絡基準が定められているなら、それに沿って動きます。基準がはっきりしないまま迷っている職場なら、平常時に確認しておくと、いざというときに悩む時間が減ります。

低ナトリウム血症を疑っても介護職だけでしてはいけないこと

最後に、やってはいけない側を整理しておきます。ここが曖昧なままだと、良かれと思った行動が本人の状態を悪くすることもあります。

水分を止める・増やすを自己判断しない

低ナトリウム血症は、体液が減っている場合も、増えている場合もあります。原因によって必要な対応が逆になることがある、ということです。

そのため、介護職の判断で水分を制限することも、逆に大量に飲ませることも避けてください。どちらも、状態によっては悪い方向へ働き得ます。水分の管理に関する指示が出ているなら、その範囲を正確に把握して、実際の摂取量を記録します。

塩分を取らせればよいとは限らない

「ナトリウムが低いなら塩を足せばいい」という発想は、いちばん出てきやすい誤解やと思います。

けれど記事の前半で書いたとおり、低ナトリウム血症は体内のナトリウムが単純に不足しているとは限らない状態です。塩や梅干し、経口補水液やスポーツ飲料を、治療のつもりで介護職が与えることは避けてください。ナトリウムの補正は、速度も含めて医療の管理下で行われるもので、急な補正が別の重い問題につながる可能性も指摘されています。

この記事で具体的な塩分量や飲水量を示さないのも、同じ理由です。個別の状態を見ずに数字を出すこと自体が危うい。

薬を勝手に止めない

薬が関係している可能性があるとしても、介護職の判断で服薬を止めたり、量を変えたりすることはできません。処方には理由があり、中止することで別の問題が起きることもあります。

できるのは、いつから薬が変わったのかを記録から確認して伝えることです。そこから先の判断は、処方した側が行います。

治療ではなく観察・安全確保・報告に徹する

整理すると、介護職の持ち場は三つです。普段との違いを観察すること、転倒などを防いで安全を確保すること、そして確認できた事実を医療職へ渡すこと。

症状が軽く見えるからと放置するのも、逆に自分で何とかしようとするのも、どちらも避けたい。地味に思えるかもしれませんが、この三つを丁寧にやることが、結果的にいちばん早い対応につながります。

高齢者の低ナトリウム血症でよくある疑問

Q1.水をたくさん飲むと必ず低ナトリウム血症になりますか?

必ずではありません。低ナトリウム血症は、水分の摂取量だけで決まるものではなく、体がどれだけ水分を排泄できるか、病気や薬、食事の状況がどうかといった要素が関係します。

大量の飲水が背景の一つになることはありますが、それだけで説明できる状態ではありません。逆に、水分をたくさん飲んでいない人でも起こり得ます。飲水量は、報告に添える情報の一つとして扱ってください。

Q2.低ナトリウム血症なら塩分を取らせればよいですか?

原因によって必要な対応が変わるため、そう単純にはいきません。体液が減っている場合もあれば、水分がたまっている場合もあり、必要な対応が反対になることもあります。

介護職や家族の判断で塩分を与えることは避けてください。医療職が状態を評価したうえで方針が決まります。指示が出ている場合は、その範囲を守って記録を残す形になります。

Q3.ぼんやりしているだけでも報告した方がよいですか?

報告する価値はあります。ただし、「ぼんやりしている」だけでは受け取る側が動きにくいので、中身を添えてください。

普段と比べて何がどう違うのか、いつから変わったのか、最後に普段どおりだったのはいつか、ほかに症状はあるか、変化は続いているか。ここまでそろえば、病名を断定しなくても十分に伝わります。判断は医療職に任せて、事実を渡すところに集中してもらえればと思います。

Q4.バイタルサインが普段どおりなら低ナトリウム血症ではありませんか?

バイタルサインだけでは、確認も除外もできません。低ナトリウム血症は血液検査と医療職の評価で判断される状態で、体温や血圧、脈拍、SpO2が普段どおりでも否定にはなりません。

また、バイタルが安定して見えても、ほかの緊急性の高い病気を除外できるわけでもありません。数値と一緒に、意識、会話、動作、摂取、排泄といった情報も含めて報告してください。

まとめ|介護職に必要なのは病名当てではなく「普段との違い」をつなぐこと

低ナトリウム血症は、血液中のナトリウムに対して水分が相対的に多くなった状態で、体内の塩分が単純に足りない病気とは限りません。水の飲みすぎだけが原因でもなく、嘔吐や下痢、薬剤、心臓や肝臓、腎臓の病気、水分を排泄しにくい病態など、背景はいくつもあります。高齢者では、それらが一人のなかで重なることも珍しくありません。

症状だけで確認できる状態ではなく、判断には血液検査と医療職の評価が必要です。だから、急なぼんやりやふらつき、反応の鈍さを見つけたときに、年齢や認知症だけで説明を終わらせないでほしいと思います。

介護職が渡せるのは、最後に普段どおりだった時刻と気づいた時刻、普段との違い、食事や水分、排泄の状況、記録で確認できる薬や既往、測定できたバイタル。この積み重ねです。深い眠気やけいれん、意識の大きな変化があるときは、病名を考えるより先に施設の手順へ従って人を呼んでください。

そして、水分や塩分、薬を自分たちの判断で動かさないこと。ワイも現場で働く一人として思いますが、介護職の強みは検査ではなく、その人の昨日を知っていることです。そこを言葉にして渡すところまでが、この場面での仕事やと思っています。

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