夜勤介護マンの日記

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高齢者の心不全とは?むくみ・息切れ・体重増加など介護職が気づきたい変化

高齢者の心不全とは?むくみ・息切れ・体重増加など介護職が気づきたい変化

夜勤介護 × 家族介護

介護の現実は、きれいごとだけでは分からない。

現場で起きたこと、夜勤者の判断、家族が抱える迷いを実録でお届けします。

夜勤介護と家族介護の実録を読む

高齢者の心不全では、動いたときの息切れ、足のむくみ、短い期間での体重増加、以前より疲れやすくなる、といった変化が現れることがあります。高齢の方の場合はそれだけでなく、食事が進まない、動作がゆっくりになった、日中うとうとしている時間が増えたなど、一見すると心臓と結び付けにくい形で出てくることもあります。

ただし、介護職が心不全を診断することはありません。診断は、医師が診察や検査をもとに行うものです。介護職に求められているのは、毎日その人の生活を見ているからこそ気づける「いつもとの違い」を見つけて、客観的な情報にして看護師や医師へ渡すことやと思っています。

この記事では、心不全がどのような状態なのかという基本から、息切れやむくみが起こる仕組み、歩行や移乗、排泄、更衣、食事、夜間といった介助場面ごとの観察点、記録の残し方、医療職への報告に必要な情報、早めに相談したい変化と急いで対応したい変化の分け方までを順番に整理します。

介護現場歴20年の現役介護職として、専門的な治療の話ではなく、今日の勤務から確認できるところを中心にまとめました。

この記事で分かること

  • 高齢者の心不全とはどのような状態か
  • 息切れ、むくみ、体重増加が起こる理由
  • 日常介助で確認したい変化
  • 看護師や医師へ報告する内容
  • 急いで対応したい変化と介護職の役割範囲

高齢者の心不全とは

心不全という言葉は申し送りやカンファレンスでもよく出てきますが、「どんな状態のことですか」と聞かれると答えに詰まる、という人は少なくないと思います。まずはここから整理しておきます。

心不全は一つの原因名ではなく「心臓の働きが弱った状態」

心臓は、血液を全身へ送り出すポンプの役割をしています。血液は酸素と栄養を体のすみずみへ運び、二酸化炭素や老廃物を回収して戻ってきます。この循環が滞りなく回っているあいだは、歩いても、着替えても、食事をしても、その動きに必要な分だけ血液が送られます。

心不全は、心臓の構造や働きに異常が生じて、息切れ、むくみ、だるさ、動ける範囲が狭くなるといった症状が現れた状態を指します。日本循環器学会と日本心不全学会が合同でまとめた2025年改訂版の心不全診療ガイドラインでも、心不全は呼吸困難や浮腫、倦怠感、運動耐容能の低下などが現れる症候群として説明されています。

症候群という言葉は少し硬いので言い換えると、「いろいろな心臓の病気の結果として、体に共通した症状が出てきた状態」ということです。心筋梗塞、弁膜症、不整脈、高血圧による心臓への負担など、たどってきた道すじはそれぞれ違っても、行き着いた状態をまとめて心不全と呼びます。つまり心不全は、原因を指す病名というより、状態の名前に近いものです。

もうひとつ押さえておきたいのは、心不全と心停止は別のものだという点です。心停止は、心臓が動きを止めてしまった状態を指します。心不全は、心臓が働いてはいるものの、その働きが体の必要量に追いついていない状態です。心不全という診断名がついている利用者さんが、いま心臓が止まりかけている、という意味ではありません。ここを混同すると、必要以上に身構えてしまったり、逆に日々の小さな変化を軽く見てしまったりします。

高齢者では複数の病気やフレイルが重なりやすい

心不全の背景になり得るものとして、高血圧、冠動脈疾患、弁膜症、不整脈などが挙げられます。年齢が上がるほどこうした病気を持つ人の割合は増えますが、高齢だから誰でも心不全になる、という話ではありません。

高齢者の心不全で難しいのは、心臓だけを見ていれば済まないところです。2025年改訂版のガイドラインでも、高齢の心不全では併存症、フレイル、栄養状態、認知機能、介護の状況、精神的・社会的な支援まで含めた包括的な管理が重要だと整理されています。

腎臓や呼吸器の病気を併せ持っている、体力や筋力が落ちて動ける範囲が狭くなっている、食事量が減って栄養状態が下がってきている、認知機能の変化があって自分の不調を言葉にしにくい。こうした要素が重なると、いま起きている変化が心不全によるものなのか、別の理由なのかが、本人にも周囲にも分かりにくくなります。

裏を返せば、病名を詳しく知っているかどうかより、その人の普段を知っている人が変化に気づけるかどうかが効いてくる場面が多い、ということでもあります。次は、その症状がなぜ起こるのかを見ていきます。

心不全で息切れやむくみが起こる仕組み

症状の名前だけを覚えても、現場では応用が利きません。なぜその変化が起こるのかを知っておくと、目の前の様子から「これは報告したほうがええな」と判断しやすくなります。心不全で見られる変化は、大きく三つの方向に分けると整理しやすくなります。

全身へ血液を送り出しにくいと疲れやすくなる

一つ目は、心臓から全身へ十分な血液を送り出しにくくなる方向です。筋肉や臓器へ届く酸素と栄養が足りなくなると、体は動きに耐えられなくなります。少し動いただけで疲れる、休む回数が増える、動作が最後まで続かないといった形で出てきます。

2025年改訂版のガイドラインでも、心臓から送り出される血液量の低下や組織への血流低下に関連して、疲労感、倦怠感、めまい、失神、認知機能の低下、せん妄などが見られる場合があると説明されています。心臓の不調というと胸が痛む、胸が苦しいという場面を思い浮かべがちですが、実際には全身の元気のなさとして現れることがあるわけです。

ただし、疲れやすさは心不全以外でも起こります。貧血、感染症、脱水、睡眠不足、薬の影響、気分の落ち込みなど、原因はいくらでもあります。疲労感ひとつを取り出して心不全と結び付けることはできません。

肺側にうっ滞すると息切れや呼吸困難が現れる

二つ目は、送り出しきれない血液が肺の側で滞る方向です。肺の血管に圧がかかると肺の中へ水分がしみ出しやすくなり、酸素の受け渡しが行われる場所が水分に邪魔されます。その結果として、息切れや呼吸困難が現れます。

初めのうちは、動いたときだけの息切れとして出ることが多いようです。坂道や階段、廊下の歩行、更衣、入浴といった、体に負荷がかかる場面です。国立循環器病研究センターの解説でも、坂道や階段での息切れ、疲れやすさが心不全で見られる変化として挙げられています。

進行すると、少しの動作でも苦しくなり、さらに悪化すると夜間や安静時にも呼吸困難が現れる場合があります。なかでも、横になると苦しく、上体を起こすと楽になる状態は起坐呼吸と呼ばれ、重い変化として扱われます。横になると下半身にたまっていた血液が胸のほうへ戻り、肺側のうっ滞が強まるためです。夜間に何度も起き上がる、枕を高くしたがるという変化は、この形で現れることがあります。

体に水分がたまるとむくみや体重増加につながる

三つ目は、全身の静脈側に血液や水分が滞る方向です。腎臓へ流れる血液が減ると尿として出ていく水分が減り、体の中に水分がたまりやすくなります。国立循環器病研究センターの解説でも、尿量が減って水分が体内にたまることで体重が増える場合があるとされ、1週間で2〜3kg程度の増加が例として挙げられています。

たまった水分は、重力の影響を受ける場所に出やすくなります。座って過ごす時間が長い人なら、すね、足の甲、足首。臥床時間が長い人なら、臀部や背中側に現れることがあります。おなかの側にたまれば腹部の張りとして感じられ、胃が圧迫されて食欲の低下につながる場合もあります。

ここで押さえておきたいのは、短い期間での体重増加は、太ったというより体液がたまった可能性を含んでいるという見方です。数日から1週間で増えた重さが脂肪であることは考えにくく、水分の貯留を疑う材料になり得ます。

ただし、むくみも体重増加も、心不全だけで起こるものではありません。腎臓や肝臓の病気、低栄養、薬の影響、長時間同じ姿勢でいたことなど、他の理由でも起こります。この点は、あとの見出しであらためて扱います。

三つの方向を、生活の中でどう見えるかに置き換えると、次のように整理できます。

心不全で起こり得る状態|全身へ血液を送り出しにくい

生活上で見える変化
以前と同じ距離で休むようになる。動作のあと、回復までに時間がかかる。日中の活気が落ちる。離床していられる時間が短くなる。
介護職が確認すること
いつからその状態なのか。どの動作で出るのか。休むと元に戻るのか。介助量が増えていないか。

心不全で起こり得る状態|肺側に血液や水分がうっ滞する

生活上で見える変化
動作時の息切れ。夜間の咳。横になると苦しがる。枕を高くしたがる。会話が途中で途切れる。
介護職が確認すること
安静時か動作後か。姿勢を変えると楽になるか。呼吸数と会話の続き方。眠るときの姿勢が変わっていないか。

心不全で起こり得る状態|全身の静脈側に血液や水分がうっ滞する

生活上で見える変化
足のむくみ。靴下や衣服の跡。靴が入りにくい。腹部の張り。食事量の低下。体重の増加。
介護職が確認すること
むくみの場所と左右差。押した跡が残るか。体重の推移と測定条件。排尿の回数や量。

この三つは、どれか一つだけが起こるとは限りません。息切れとむくみが同じ時期に出ることもあれば、疲れやすさだけが先に見えることもあります。だからこそ、症状をひとつずつ切り離して覚えるより、方向で捉えておいたほうが現場では使いやすいと思います。

出典:日本循環器学会・日本心不全学会合同「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」/国立循環器病研究センター「心不全」(2026年8月31日確認)

高齢者の心不全で気づきたい主な変化

ここからは、実際に何を見ていくかという話です。心不全に関連する変化は一つだけ現れるとは限らず、いくつかの領域に同時に出てくることがあります。そこで、呼吸、むくみと体重、活動性、食事と腹部の症状、排尿、反応や認知の状態という領域に分けて確認すると、抜けが少なくなります。ひとつの症状だけを追いかけるより、領域をまたいで見たほうが、変化の全体像がつかみやすくなります。

以前と同じ動作で息切れする

まず呼吸です。心不全に関連する息切れは、同じ動作を比べたときの違いとして現れます。昨日まで一息で歩けていた距離で立ち止まる、移乗のあとに肩で息をしている、更衣の途中で手が止まる、話しているうちに文が短く切れる。こうした場面は、数値が動くより先に見えることがあります。

動作のあと、呼吸が落ち着くまでにかかる時間も手がかりになります。以前は座ればすぐ整っていたのに、数分かかるようになった、という違いです。何もしていないのに息が上がっている場合は、さらに注意して見る場面になります。

呼吸は、回数だけでなく形も見ます。1分間の呼吸数、肩を上下させて呼吸していないか、口をすぼめて息を吐いていないか、会話が最後まで続くか、途中で息継ぎが入るか。声の大きさが普段より小さくなることもあります。

夜間は、日中とは違う情報が取れる時間帯です。横になってから咳が出る、何度も目が覚める、枕を足したがる、ベッドの背もたれを上げたままにしている。横になると苦しく、上体を起こすと楽になるという変化は、重い変化として扱われるものです。夜勤帯に気づいた場合も、朝まで様子を見るのではなく、その時点で施設の手順に沿って報告する場面になります。

足のむくみや短期間の体重増加

むくみは、現れる場所が姿勢によって変わります。日中に車椅子で過ごす時間が長い人は、足の甲、足首、すねに出やすくなります。臥床時間が長い人では、臀部や背中側、太ももの裏側に出ることがあります。足だけを見て「むくみなし」と判断すると、見落とすことがあります。

気づきやすいのは、跡です。靴下のゴムの跡がいつもより深く残る、ズボンの縫い目の跡がつく、いつもの靴が入りにくい、スリッパがきつそう。こうした変化は、本人が訴えなくても目に入ってきます。

見るときは、左右の差も確認します。両足に同じように出ているのか、片側だけなのか。指で軽く押したときに跡が残るかどうかも情報になりますが、高齢者の皮膚は傷つきやすいので、強く押さないようにします。

あわせて、いつから始まったか、どこまで広がったかを確認します。足首だけだったものがすねまで上がってきた、という変化は、範囲の広がりとして伝えられます。

体重は、一回の数値より推移を見るものです。前回と比べて増えているか、何日間でどれくらい変わったか、そのとき測定条件がそろっていたか。この三つがそろって、はじめて比較できる情報になります。測定条件については、あとの見出しで詳しく整理します。

むくみを介護施設でどう観察し、足を上げて休んでもらったあとまで何を確認するかは、高齢者の足のむくみを介護現場で見るポイントで実体験を交えて書いています。

疲れやすさとADLの低下

心不全の変化は、症状として訴えられるより先に「できていたことができなくなる」という形で見えることがあります。今までは休まず行けていたトイレまでの距離で途中に休憩が入る、移乗のあとにぐったりして次の動作に移れない、レクリエーションの途中で居室へ戻りたがる、といった場面です。

会話の量が減ることもあります。話しかけても返事が短くなる、自分から話しかけてこなくなる。これは呼吸のしんどさから来ている場合もあれば、全身のだるさから来ている場合もあります。

離床時間の変化も見ておきたい情報です。日中に起きていられる時間が短くなった、車椅子に座ったまま眠ってしまうことが増えた、食堂へ出てくる回数が減った。介助量の変化も同じで、見守りで動けていた人に手を添えるようになった、一部介助だった移乗が全介助に近づいた、という変化は記録に残しやすい形をしています。

こうした変化は「年やから」「体力が落ちてきたから」で片づけられてしまうことがあります。日本心臓財団の解説でも、高齢者では症状を年齢のせいと考えて放置しないことが大切だと呼びかけられています。加齢による変化なのか体調の変化なのかを介護職が判定する必要はありませんが、変化として拾って伝えることはできます。

食欲低下、腹部膨満感、尿量の変化

食事の場面でも変化は出ます。全体の摂取量が落ちる、食べ始めてすぐに箸が止まる、少量で満腹になる、好きだったものを残す。おなかにうっ滞があると胃が圧迫され、少ない量で苦しくなることがあります。

腹部の張りも合わせて見ます。おなかが以前より膨らんで見える、ズボンやベルトがきつくなった、触ると張っている感じがする。これらは、本人が「食欲がない」としか言わない場合の裏づけになることがあります。

排尿は、量と回数の両方に注目します。尿量が普段より減っている、トイレ誘導の回数が減った、パッドの濡れ方が少なくなった、逆に夜間の排尿が増えた。日本心臓財団の解説でも、疲れやすさ、咳、食欲不振などは見逃したくない変化として挙げられています。

ただし、食事量の低下も排尿の変化も、心不全以外に理由があることは珍しくありません。義歯の不具合、便秘、発熱、薬の影響、環境の変化などでも起こります。介護職の側で原因を決めず、「いつから、どう変わったか」を事実として残すところまでが役割になります。

反応の鈍さや認知状態の変化

反応の変化も、心不全に関連して現れることがあります。声をかけてから返事までの間が長い、日中ぼんやりしている時間が増えた、会話がかみ合わない、日付や場所の見当がつきにくくなった。落ち着かない、そわそわする、夜に混乱するといった、せん妄のような形をとる場合もあります。

ガイドラインでも、組織への血流低下に関連して認知機能の低下やせん妄が見られる場合があると触れられています。ただ、この領域は低酸素、感染症、脱水、便秘、痛み、薬剤など、他の原因でも同じように現れます。何が原因かを介護職が決めることはできません。

ここで意識しておきたいのは、言葉での訴えが少ない人ほど、言葉以外の情報が大切になるということです。認知症があるから分からない、と切り上げてしまうと、その人が出しているサインを取りこぼします。表情がこわばっている、いつもと姿勢が違う、食事のペースが変わった、眠り方が変わった、触られるのを嫌がる場所ができた。これらは全部、その人が発している情報です。

そして、この差に気づけるのは普段の様子を知っている職員です。初めて会う人に分かるのは「今の状態」であって、「普段との違い」ではありません。ここが、生活の場で働く介護職の情報が意味を持つ理由やと思います。

症状の有無だけでなく、この五つを合わせて見る

  • いつから始まったか(今日なのか、数日前からなのか)
  • 普段のその人と比べて、どう違うか
  • どの動作と結び付いているか、安静時にも出るか
  • 時間の経過とともに、改善しているか悪化しているか
  • 他の症状と組み合わさっていないか

この五つがそろっていると、報告を受けた医療職は状況を思い浮かべやすくなります。逆に、症状名だけが並んでいる情報は、判断に使いにくいものになります。

日常の介助場面だから見つけられる変化

診察の場面で見えるのは、その時間に切り取られた状態です。短い診察や訪問のあいだに、その人が普段どれくらい歩けるのか、いつもは何分で食事を終えるのか、夜どんな姿勢で眠っているのかまでは分かりません。そこを知っているのは、毎日そばで介助している人です。ここからは、介助場面ごとに何と何を比べるのかを整理します。ここで挙げるのは一般的な観察例で、特定の現場のやり方を示したものではありません。

歩行・移乗・離床

歩行では、距離そのものより「同じ距離をどう歩いたか」を見ます。いつも通っている廊下、いつものトイレまでの経路で、途中に立ち止まりが入るようになったか。手すりにもたれる時間が長くなっていないか。歩き終わったあとに座り込む様子はないか。同じ道を毎日見ているからこそできる比較です。

移乗では、立ち上がりから座位が安定するまでの時間と、そのあとの呼吸を見ます。移乗自体はできていても、終わったあとに肩で息をしている、しばらく話しかけても返事が返ってこない、という状態は情報になります。介助者の手がどれだけ必要だったかも、前回との比較で書けます。

離床の場面では、ベッドから起き上がるまでの様子、端座位を保っていられる時間、車椅子に乗ってからの姿勢の崩れ方などが見えます。朝の離床にかかる時間が延びているなら、それも変化のひとつです。

動作の前後にバイタルを測る場合は、勤務先の業務範囲と指示に従ってください。測ってよい場面と、測る意味のあるタイミングは施設ごとに決まっています。そして、息切れが出ている状態で「あと少しやから」と動作を続けさせないことも、合わせて意識したいところです。途中で休憩を挟む、その日は距離を短くするといった対応は、報告と並行してできることになります。

排泄介助

トイレまでの移動は、その人にとって毎日繰り返される決まった負荷です。距離も経路もほぼ同じなので、変化が出たときに気づきやすい場面と言えます。移動中の息切れ、便座に座ってからの呼吸の落ち着き方、立ち上がるときのふらつきなどを見ます。

排尿については、回数と量の両方を見ます。日中のトイレ誘導が何回だったか、パッドやオムツの交換回数と濡れ方はどうか、夜間の排尿が増えたのか減ったのか。普段の回数を知っていないと比較できないので、ここは継続して見ている人の強みが出るところです。

利尿薬を服用していると把握している場合でも、薬がどう効いているか、効きが悪くなっているかを介護職が判断することはありません。尿の量や回数が変わったという事実を伝えるところまでが役割で、その解釈は医療職の領域になります。

尿量を正確に測定していない現場も多いと思います。その場合、「なんとなく少ない気がする」という書き方ではなく、交換回数、パッドの濡れ具合、トイレ誘導の回数、失禁の有無など、確認できた形で残します。測っていないなら測っていないと分かるように書くほうが、受け取る側は判断しやすくなります。

更衣・オムツ交換・靴の着脱

更衣とオムツ交換は、全身の皮膚を確認できる数少ない場面です。むくみは服を脱いだときに見つかることが多く、着替えの介助はそのまま観察の時間になります。

着脱の場面で分かるのは、跡と、きつさです。靴下のゴム跡がいつもより深い、ズボンのウエストがきつくなった、足を靴に入れるのに時間がかかる、いつも履いている靴が履けない。本人が「むくんでいる」と言わなくても、こうした物理的な変化として出てきます。

臥床時間が長い人では、足以外の場所も確認します。オムツ交換のときに、臀部や仙骨のまわり、太ももの後ろ側、背中側の皮膚がどうなっているか。体位変換の際に見えるところも合わせて見ておきます。

むくんだ皮膚は張って薄くなり、ちょっとしたことで傷つきやすくなります。皮膚の色、熱を持っていないか、発赤や傷、浸出液がないかも同時に確認して、見つけたものはそのまま記録に残します。むくみの記録と皮膚の記録は、別々に書くより一緒に残しておいたほうが、あとで経過を追いやすくなります。

食事と水分

食事の場面では、量だけでなく食べ方を見ます。最初の数口は進むのに途中で止まる、食べている途中で息をつく、食後に苦しそうにしている、いつもの時間内に食べ終わらない。食事は毎日繰り返されるので、変化が出れば比較材料は十分にあります。

むせと息切れは分けて記録します。飲み込みの問題で咳き込んでいるのか、呼吸がしんどくて食事が続かないのかでは、伝わり方が変わります。判別が難しい場合は、どちらか決めずに見えたとおりを書けば十分です。

飲水量の変化も見ておきたいところです。すすまなくなったのか、逆に普段より多いのか。ここで気をつけたいのは、心不全と聞いたからといって、介護職の判断で水分を減らさないことです。高齢者では脱水も大きな危険になり、水分の管理はその人の病状や併存疾患に応じた個別の判断になります。

医師や看護師から水分に関する指示が出ている場合は、その範囲を正確に把握して、実際に摂取した量を記録します。指示された量に届かなかった日があれば、それも含めて残しておきます。

夜間・入浴・清拭

夜間は、日中には出てこない情報が取れる時間帯です。臥床してから咳が出る、寝入ってしばらくすると苦しそうにする、何度も目を覚ます、トイレのあとに呼吸が整うまで時間がかかる。巡視のたびに同じ人の様子を見ているので、その夜のなかでの変化も追えます。

眠るときの姿勢は、とくに見ておきたい情報です。枕を増やしてほしいと言う、ギャッジアップを上げたままにしている、ベッドではなく椅子や車椅子で眠ろうとする。本人が言葉で苦しさを訴えなくても、楽な姿勢を自分で探している場合があります。前の勤務帯と比べて姿勢が変わっていないかを見ます。

入浴や清拭は、体に負荷がかかる場面であり、同時に全身を見られる場面でもあります。脱衣のときのむくみ、皮膚の状態、浴室での呼吸、湯から出たあとの疲れ方、顔色、発汗の量、口唇の色。普段は問題なく入れていた人が途中で休みたがるようになったら、それは変化です。

息切れが強い、顔色が悪い、いつもと様子が違うという状態のときに、予定だからと入浴を続ける必要はありません。清拭に切り替える、部分浴にする、その日は見送るといった判断は、施設の手順と医療職の指示につなぎます。夜勤帯や休日など医療職が少ない時間帯であれば、なおさら決められた連絡手順に沿って動くことになります。

介護職が観察・記録したい項目

変化に気づいても、なんとなく苦しそう、というところで止まってしまうと、受け取った医療職は判断に使えません。かといって、介護職が医学的な評価をする必要もありません。その間にあるのが、見えたことを、あとから他人が読んでも同じ絵が浮かぶ形にしておく作業です。ここでは、その観察項目を整理します。

「普段の状態」を基準にする

心不全に限らず、変化を伝えるには基準が要ります。その基準は、教科書の正常値ではなく、その人の普段です。

普段どれくらいの距離を休まず歩けるのか。普段の移乗にどれだけ介助が必要か。普段の呼吸は静かなのか、もともと少し荒いのか。普段の体重はどのあたりで推移しているのか。普段の食事摂取量はどのくらいか。普段の排尿回数と、夜間に起きる回数は何回か。普段どんな姿勢で眠っているのか。

この基準は、担当が変わったり勤務帯が違ったりすると共有されにくいものです。だからこそ、記録のなかに「普段はこうだった」を残しておく意味があります。変化があった当日に慌てて思い出すのではなく、日常の記録がそのまま基準になっている状態が理想やと思います。

もともと軽いむくみがある人、もともとSpO2が低めの人、もともと息切れしやすい人もいます。その場合の基準はその人自身の普段であって、他の利用者さんと同じではありません。

呼吸とバイタルは数値と様子を一緒に記録

数値だけでも、様子だけでも情報は足りません。両方あって、はじめて判断材料になります。

数値として残せるのは、呼吸数、SpO2、血圧、脈拍、体温です。脈拍はリズムが乱れていないかも合わせて見ます。そこに、測定したときの条件を添えます。座っていたのか、臥床していたのか、動作の直後なのか、休んでからなのか。同じSpO2の値でも、安静時なのか歩行直後なのかで意味は変わります。

酸素療法を受けている人であれば、酸素を使用しているかどうかと、指示されている流量も記録します。介護職が流量を変えることはありませんが、どの条件で測った値なのかを伝えるために必要な情報です。

様子として残せるのは、会話が続くかどうか、話しながら息継ぎが入るか、咳の有無と出るタイミング、顔色、冷汗、口唇や爪の色などです。肩で息をしている、口をすぼめて呼吸している、といった呼吸の形も書けます。

ここで押さえておきたいのは、SpO2が普段どおりでも安心とは限らないという点です。息苦しさを訴えている、活動量が明らかに落ちている、むくみが増えているといった変化があれば、数値が保たれていても報告の対象になり得ます。家庭用の測定機器の値だけで、心不全の有無や悪化を判断することはできません。

SpO2の数値の見方や測定時の注意、数値と一緒に看護師へ伝えたい情報は、SpO2を介護現場で活かすための見方と報告の基本で詳しく整理しています。

体重はできるだけ同じ条件で比較

体重は、心不全に関連する変化のなかでも数字として残しやすい項目ですが、条件がそろっていないと比較になりません。

そろえたいのは、同じ体重計を使うこと、同じ時間帯に測ること、衣服の量を同程度にすること。可能であれば、排尿のあと、食事の前など、測るタイミングも決めておきます。車椅子体重計やリフト式の体重計を使う場合は、車椅子の重さの扱いを含めて施設の手順に従います。

そのうえで見るのは、一回の増減ではなく推移です。何日間でどれくらい変わったかという形で並べると、受け取る側が判断しやすくなります。

立位が不安定な人を、体重測定のために無理に立たせることはしません。測れない場合は、測れないという事実も含めて共有し、むくみの程度、腹囲の変化、衣服のきつさ、活動性、食事量など、代わりに追える情報を医療職と相談して決めておくほうが現実的です。

むくみは場所・左右差・広がりを記録

むくみの記録は、「あり」「なし」だけでは情報になりません。

残したいのは、両側なのか片側なのか、どの部位に出ているのか、指で押したときに跡が残るか、靴下や衣服の跡がついているか、前回の記録と比べて範囲が広がっているか。部位は、足の甲、足首、すね、太もも、臀部、背部などのように、見た場所をそのまま書きます。皮膚の色、熱感、痛みの訴え、傷の有無も合わせて残します。

とくに、片側だけが急に腫れた、痛みがある、赤くなっている、熱を持っているという場合は、心不全によるむくみと決めつけず、速やかに医療職へ報告する場面です。原因が違う可能性があります。

主観ではなく確認できた事実を書く

記録が判断材料になるかどうかは、事実と印象が分けて書かれているかで決まります。印象を書いてはいけない、という意味ではありません。印象を書くなら、その根拠になった事実も一緒に書く、ということです。

しんどそうやと感じたのなら、何を見てそう感じたのかを添えます。歩行距離、休憩の回数、呼吸数、会話の途切れ方、表情、姿勢。そこまで書いてあれば、読んだ人は同じ場面を思い浮かべられます。

記録に含めておきたい項目は、次のとおりです。

記録に含めたい項目

  • 確認した時刻
  • どの場面で気づいたか(歩行中、移乗後、食事中、夜間巡視時など)
  • 普段との差(普段はどうで、今日はどうだったか)
  • 測定した値と、その測定条件
  • 本人の訴えがあれば、その内容
  • その場で行った対応
  • 対応したあとの変化
  • 誰に、いつ報告したか

この形で残しておくと、次の勤務帯の職員も、看護師も、同じ情報から出発できます。単独の数値だけが並んでいる記録と、数値に生活上の変化が添えられている記録では、読んだ人が次に動けるかどうかが変わってきます。

医療職へ伝わる報告に必要な情報

記録が残っていても、報告の順番がばらばらだと、受け取った側は状況をつかむまでに時間がかかります。とくに電話で伝える場面では、順番がそのまま伝わりやすさになります。報告に含めたい内容は、次の五つに整理できます。

  1. いまの状態と、どれくらい急ぐか
  2. いつから、どの場面で起きたか
  3. 普段と比べてどう違うか
  4. 測定した値と、一緒に見られている症状
  5. すでに行った対応と、そのあとの変化

この順番は、慣れるまでは手元にメモを置いておくくらいでちょうどええと思います。頭から順に話そうとすると、いちばん急ぐ情報が後ろに回りがちやからです。

最初に現在の状態を伝える

報告は、いま目の前で起きていることから始めます。安静にしていても苦しそうなのか、会話ができる状態なのか、意識ははっきりしているのか、胸の痛みや冷汗、失神があったか、いまも悪くなり続けているのか。

経過を時系列で丁寧に話し始めると、緊急性の高い情報が最後になってしまうことがあります。急ぐ情報ほど先に出す、という順番だけ意識しておくと、受け取る側は最初の一言で構えを決められます。

言い方としては、いま確認できている状態をそのまま伝えれば十分です。会話が続かない、唇の色が普段と違う、呼びかけへの反応が鈍い。この段階で、医学的な言葉に置き換える必要はありません。

発症時刻と経過を伝える

次に、時間の情報です。いつ気づいたのか。突然だったのか、数日かけて少しずつだったのか。動作の途中だったのか、何もしていないときだったのか。休んだり姿勢を変えたりして、変化があったのか。

体重やむくみのように、数日単位で動く情報は、その推移も添えます。何日前の記録と比べているのかが分かれば、受け取る側は変化の速さを見積もれます。

気をつけたいのは、「前から」「ときどき」といった言葉です。この表現では期間が伝わりません。記録をさかのぼって確認できる範囲で日付を示し、確認できないところは確認できていないと伝えるほうが、判断に使えます。

普段との比較を具体的にする

ここが、介護職からの報告でいちばん価値の出る部分やと思っています。医療職は検査や診察のデータを持っていますが、その人の普段の生活は、日々介助している側のほうが詳しく知っています。

普段歩ける距離と今日の距離。普段必要な介助量と今日の介助量。普段の体重とバイタルの範囲。普段の食事摂取量と今日の量。普段の排尿回数と今日の回数。普段の睡眠姿勢と昨夜の姿勢。この比較があると、同じ数値でも意味の重みが変わります。

比較できる記録がない場合は、無理に埋めずに、分からないと伝えます。推測で「たぶんいつもより少ない」と言うより、記録がないと明示するほうが安全です。そのうえで、今日から何を記録しておけばよいかを確認しておくと、次につながります。

測定値は条件と一緒に伝える

血圧、脈拍、SpO2、呼吸数、体温を伝えるときは、数値だけを読み上げるのではなく、どんな条件で測ったかを添えます。安静時か動作の直後か、座位か臥位か、酸素療法中ならその指示流量はいくつか。

再測定した場合は、前後の値を両方伝えます。一度目と二度目で差があるなら、それ自体が情報になります。

測定がうまくいかなかったときも、そのまま伝えます。指先が冷たくてSpO2が安定しない、体動があって血圧が測れない、機器のエラーが出た。測れなかった事実を隠すと、受け取る側は存在しない数値をもとに考えることになります。なお、強い呼吸困難や意識の変化があるときは、測り直しに時間をかけるより先に連絡するのが優先です。

介護職は診断名ではなく観察事実を伝える

報告の場で、心不全が悪化しています、と言い切る必要はありませんし、言い切ることもできません。診断は医師の領域です。同じように、利尿薬を増やしたほうがよいのでは、といった治療の提案も、介護職から出すものではありません。

伝えるのは、観察した事実です。息切れがいつから、どの場面で出ているか。むくみがどこに、どれだけあるか。体重が何日でどれだけ動いたか。食事と排尿がどう変わったか。これらを漏れなく渡せば、判断に必要な材料はそろいます。診断ではなく、いつもとの違いを具体的な情報にして渡す。ここが介護職の持ち場やと思います。

そして報告のあとは、次に何を確認しておけばよいか、どんな変化があれば再度連絡するかを聞いておきます。伝えて終わりではなく、次の観察につながる形で受け取っておくと、勤務帯をまたいでも情報が途切れません。

報告するときに手元へ置いておきたい項目

  • いまの呼吸の状態と、意識の状態
  • 気づいた時刻
  • 気づいた場面(歩行中、移乗後、食事中、夜間巡視時など)
  • 普段との違い
  • 血圧、脈拍、SpO2、呼吸数、体温と、その測定条件
  • 体重の推移(測定した日と値)
  • むくみの部位、左右差、範囲の変化
  • 食事量、飲水量、排尿の回数と量
  • 胸痛、咳、発熱など、一緒に見られている症状
  • その場で行った対応
  • 対応したあとに変化があったか
  • その人に決められている連絡基準があれば、その内容

全部そろっていなくても報告はできます。そろっていない項目があるなら、そこは分かっていないと伝えれば十分です。埋まっていない欄を推測で埋めることのほうが、あとの判断を狂わせます。

早めの相談と緊急対応を分けて考える

心不全に関連する変化を、すべて同じ緊急度で扱うと現場が回らなくなります。逆に、すべてを様子見でそろえてしまうと、急ぐべき場面を見送ることになります。ここでは、早めに相談したい変化、すぐ報告して判断を求める変化、緊急対応を検討する変化の三つに分けて整理します。これは全国共通の基準ではなく、考え方の目安です。その人に主治医から決められた連絡基準がある場合は、そちらが優先されます。

息切れ、むくみ、急な体重増加は早めに相談

段階1:早めに医療職へ相談したい変化

  • 以前より、動いたときの息切れが増えた
  • 足のむくみが新しく出た、または以前より強くなった
  • 短い期間で体重が増えた
  • 疲れやすくなり、日中の活動量が落ちている
  • 食欲の低下や腹部の張りが続いている
  • 夜間の咳が出るようになった、眠るときの姿勢が変わった
  • 尿量や排尿回数が普段より減っている

この段階の変化は、その場で急変しているわけではありませんが、放っておくと積み上がっていくものです。次の勤務帯へ申し送るだけで終わらせず、看護師への相談や受診の検討につなげる場面になります。在宅であれば、訪問看護やかかりつけの医療機関へ相談するタイミングです。

ここで気をつけたいのは、まだ普通に生活できているから大丈夫、と考えてしまうことです。早い段階で気づける変化ほど、生活のなかに紛れています。日本心臓財団の解説でも、むくみや短期間の体重増加は心不全の前兆になる場合があると説明されています。

安静時の呼吸困難や起坐呼吸はすぐ報告

段階2:直ちに看護師・医師へ報告し、速やかな判断を求める変化

  • 何もしていないのに息苦しさがある
  • 横になると苦しく、上体を起こしている
  • 呼吸の状態が短時間で悪くなってきている
  • 血圧が普段より低く、ふらつきがある
  • 顔色が悪い、冷汗が出ている、手足が冷たい
  • 反応が鈍い、意識の状態が普段と違う
  • 胸の痛みや圧迫感を訴えている
  • 失神した、強いめまいがある

この段階では、記録を整えてから報告するのではなく、まず看護師や医師へ連絡します。測定できる範囲でバイタルを確認しますが、測定に時間をかけて報告が遅れるほうが問題です。測れたところまでを持って連絡し、続きは指示を受けながら行います。

夜間や休日で施設内に医療職がいない場合は、あらかじめ決められた連絡手順に沿って動きます。誰に、どの順番で連絡するのか。平常時に一度確認しておくと、その場で迷う時間が減ります。

意識障害や強い呼吸困難は救急対応をためらわない

段階3:救急要請を含む緊急対応を検討する変化

  • 強い呼吸困難がある
  • 会話を続けられない
  • 唇や爪の色が青紫色になっている
  • 呼びかけへの反応が悪い、または反応がない
  • 突然の強い胸の痛みがある
  • 失神している
  • 短時間で急速に状態が悪くなっている

施設では、緊急時マニュアル、看護師や管理者への連絡、協力医療機関への連絡といった手順が決められています。その手順に沿って動くのが基本です。在宅の場合は、本人を一人にせず、呼吸が楽な姿勢を保ちながら、状態が重ければ119番通報を含む緊急対応につなげます。

意識や呼吸がない場合は、119番通報、AED、心肺蘇生といった救命の対応が必要になります。手順の詳細はこの記事の範囲を超えるので展開しませんが、勤務先の研修や消防機関の講習で確認しておく領域です。

救急要請の要否を、介護職が単独で医学的に決定するわけではありません。ただ、決められた手順に沿って人を集め、必要な連絡を早く回すことは、その場にいる職員にしかできない動きです。

体重増加の数字だけで緊急度を決めない

体重の数字については、資料によって示され方が違います。2025年改訂版の心不全診療ガイドラインでは、症状が悪化したときに受診を考える例として3日間で2kg以上という目安が示されています。国立循環器病研究センターの解説では、1週間で2〜3kg程度の増加が例として挙げられています。

この二つは矛盾しているわけではなく、どちらも「短い期間で体重が増えることは、体液がたまっている可能性を示す変化」という同じ方向を指しています。期間の取り方や、想定している場面が違うだけです。

大事なのは、これを介護職が全員へ一律に当てはめる診断基準として使わないことです。その人に主治医から決められた連絡基準があるなら、そちらが最優先になります。測定条件がそろっていない値や、もともとの体重が分からない状態では、数字の意味も変わってきます。

報告するときは、体重だけを単独で出すのではなく、呼吸の状態、むくみ、活動性、食事量、排尿の状況を合わせて伝えます。数字は判断材料のひとつであって、それだけで緊急度が決まるものではありません。

出典:日本循環器学会・日本心不全学会合同「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」/国立循環器病研究センター「心不全」/日本心臓財団「心不全の初期サイン―早期発見のために―」(2026年8月31日確認)

むくみや息切れだけで心不全と決めない

ここまで心不全に関連する変化を見てきましたが、逆方向の注意も要ります。むくみを見たら心不全、息切れがあれば心不全、と結び付けてしまうと、別の原因を見落とすことになります。

むくみには心不全以外の原因もある

むくみは、体の水分バランスが崩れたときに現れる所見であって、心臓だけの問題ではありません。腎臓や肝臓の病気、静脈の流れの問題、栄養状態の低下、薬の影響、長時間同じ姿勢でいたことなど、関わり得る要因は複数あります。2025年改訂版のガイドラインでも、末梢の浮腫や体重増加は心不全に特有の所見ではなく、腎疾患や肝疾患などでも起こり得ると整理されています。

とくに注意したいのは、片側だけが急に腫れた場合です。痛みや赤み、熱を持っている場合も含めて、心不全によるむくみとは別の原因が考えられます。この場合は、心不全かどうかを考えるより先に、速やかに医療職へ報告する場面になります。

報告するときは、腫れている部位と左右差に加えて、痛み、発赤、熱感の有無も一緒に伝えます。むくみの有無だけを伝えるより、判断できる材料が増えます。

息切れにも複数の原因がある

息切れも同じです。呼吸器の病気、肺炎などの感染症、貧血、体力の低下、痛み、不安や緊張など、心臓以外の理由でも起こります。高齢者では、これらが同時に存在していることも珍しくありません。

介護職が鑑別診断をする必要はありませんし、してはいけません。ここで求められるのは、原因を絞ることではなく、判断に使える材料を落とさずに渡すことです。発熱はあるか、咳や痰は出ているか、痛みを訴えていないか、直前に何をしていたか。こうした情報が添えられていれば、医療職は考える範囲を広げられます。

病名より変化の組み合わせを伝える

実際の報告では、病名を当てにいくより、変化の組み合わせを伝えるほうが役に立ちます。

息切れと体重増加が同じ時期に出ている。むくみが増えていて、同時に尿量が減っている。活動性が落ちていて、食事量も落ちている。夜間の咳が出るようになり、眠るときに上体を起こすようになった。こうした組み合わせは、単独の症状より情報量が多くなります。

ただし、組み合わせが見えたからといって、それが診断になるわけではありません。あくまで報告の材料です。この組み合わせだから心不全です、ではなく、この変化とこの変化が同じ時期に出ています、という形で渡します。決めるのは医療職、材料をそろえるのが介護職、という分担になります。

介護職が独断でしてはいけない対応

観察と報告が大事やという話をしてきましたが、その先には線があります。心不全を疑う変化に気づいたとしても、診断と治療の変更は医師や看護師などの領域です。よかれと思ってした対応が、別の危険をつくることもあります。

薬を独断で増減しない

利尿薬や心臓の薬を、介護職の判断で追加したり、飛ばしたり、量を変えたりすることはありません。むくみが強いから今日は多めに、といった対応は、その人の腎機能や血圧の状態によっては危険につながります。

あらかじめ医師から、状態に応じた具体的な指示が出ている場合は、その指示と施設の手順に従います。指示の範囲を超えた判断を、現場で足すことはしません。

服薬の飲み忘れを見つけた場合も、まとめて飲ませるのではなく、いつの分が残っているのかを確認して報告します。

水分や塩分を一律に制限しない

心不全では水分や塩分の管理が必要になる場合がありますが、その内容は病状や併存疾患によって変わります。ガイドラインでも、塩分や水分の管理は個別化が必要だと整理されています。

高齢者では、脱水、腎機能、嚥下の状態、発熱、気温なども関わってきます。むくんでいるから水分を控えさせる、という一律の対応をすると、脱水という別の危険を招くことがあります。口渇を感じる働きが低下していて、自分から水分をとりにくくなっている人もいます。

介護職ができるのは、指示された量を正確に把握して、実際にどれだけ摂取したかを記録することです。飲めていない日が続いているなら、それも報告の材料になります。

酸素流量や活動量を独断で変えない

酸素療法を受けている人の流量を、苦しそうやからという理由で介護職が変えることはありません。指示された範囲と、緊急時の手順に従います。

活動についても同じです。息切れが出ている状態で、予定だからと無理に歩かせることはしません。一方で、心不全があるから安静にさせておけばよい、というものでもありません。長い期間動かないことは、筋力や生活機能の低下につながり得ます。

状態が落ち着いたあと、どこまで動いてよいかは、医師、看護師、リハビリ職と相談して決める領域です。介護職は、その日の状態と、動いたときの反応を伝える側に立ちます。

酸素流量の変更を含め、介護職ができること・原則できないことの全体像は、介護職と医療行為の線引きで公的な通知をもとに整理しています。

高齢者の心不全に関するQ&A

ここからは、現場で聞かれることの多い疑問を補足として並べておきます。

Q1.SpO2が普段と変わらなければ心不全の心配はありませんか

SpO2の値だけで、心不全があるかどうか、悪化しているかどうかを判断することはできません。酸素の値が保たれていても、息切れが増えている、動ける距離が短くなった、むくみが広がっている、体重が増えているという変化があれば、報告の対象になり得ます。

伝えるときは、値だけでなく、その人の普段のSpO2はどのくらいなのか、安静時か動作後か、酸素を使用しているかといった条件も添えてください。

Q2.毎日体重を測れない利用者はどうすればよいですか

転倒の危険がある人を、体重測定のために無理に立たせることはしません。車椅子体重計など、その人に使える方法があるかを、看護師や管理栄養士、リハビリ職と一緒に検討するほうが現実的です。

測れない場合でも、むくみの範囲、衣服や靴のきつさ、食事量、排尿の状況、呼吸の様子、ADLの変化は継続して追えます。そして、体重が測れていないという事実そのものも、報告に含めておきます。

Q3.体重はいつ測ればよいですか

比較できることが目的なので、条件をそろえるほうが先です。同じ時間帯、同じ体重計、同程度の衣服。一般には、起床後、排尿を済ませてから、食事の前といったタイミングが比較しやすいとされています。

ただし、施設の手順や主治医からの個別の指示がある場合は、そちらが優先です。測ったタイミングを記録に残しておくと、次の人が同じ条件で測れます。

Q4.片足だけ急に腫れた場合も心不全ですか

心不全と決めることはできません。片側だけの急な腫れは、心不全によるむくみとは異なる原因が考えられる状態です。痛み、赤み、熱感をともなっている場合はなおさらです。

いつから、どちら側が、どの範囲で腫れているか、痛みや発赤があるかを確認して、速やかに医療職へ報告してください。

Q5.むくみがある時は水分を減らしたほうがよいですか

介護職や家族が独断で減らすことはしません。必要な水分量は、心臓の状態だけでなく、腎機能、服用している薬、季節や気温、発熱の有無、脱水の危険などによって変わります。

その人に個別の指示が出ているかを確認し、指示があればその範囲で支援して、実際の摂取量を記録します。指示がないところに、現場で独自の基準をつくることはしません。

Q6.心不全の既往があり、普段から足がむくんでいる場合はどう見ますか

もともとむくみがある人では、有無だけを見ても変化はつかめません。見るのは普段との差です。範囲が広がっていないか、左右差が出ていないか、押した跡の残り方が変わっていないか、皮膚の状態はどうか。

あわせて、体重の推移、呼吸の様子、活動量、食事量も並べて比較します。もともとある状態が少しだけ変わったという情報は、その人を毎日見ている職員でないと出せないものです。

まとめ

高齢者の心不全では、息切れ、むくみ、短期間での体重増加、疲れやすさ、食欲の低下といった変化が現れることがあります。高齢の方では、それが病気の症状という形ではなく、歩ける距離が短くなった、日中ぼんやりしている時間が増えた、食事に時間がかかるようになった、という生活の変化として見えることがあります。

そして、ひとつの症状や一回の数値だけで心不全と決めることはできません。むくみにも息切れにも他の原因があり、判断するのは検査と診察を持っている医療職です。

介護職の側でできるのは、普段との差、いつからの変化か、測定した値とその条件、一緒に出ている症状を、確認できた形で残して渡すことです。安静時の呼吸困難、横になると苦しくなる状態、意識の変化、胸の痛みなどは、記録を整える前に連絡する場面になります。薬、水分、酸素の扱いを現場の判断で変えないことも、合わせて押さえておきたいところです。

ワイが20年やってきて思うのは、介護職の強みは医学の知識量ではなく、その人の普段を知っていることやということです。昨日と今日を比べられるのは、毎日そばにいる人だけやと思います。その違いを言葉にして医療職へ渡すところまでが、介護職にできる仕事です。

この記事は、介護職や家族が日常の変化に気づくための一般的な情報としてまとめたものです。診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状があるときは自己判断で様子を見続けず、医師や看護師などの医療職へ相談してください。呼吸が苦しい、意識の状態が普段と違うなど緊急性が高いと感じる場合は、施設の緊急時手順や119番通報を含めて速やかに対応してください。薬、水分、酸素の取り扱いは、その方への個別の指示が最優先になります。判断に迷う場面があるのは、それだけ生活を近くで見ているからやと思います。ひとりで抱え込まず、気になったことは医療職や多職種へ共有してください。

参考にした公的・専門情報

いずれも2026年8月31日に確認したものです。

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