介護の仕事をしとると、「これは介護士がしてもええんやろか」「これは看護師しかできんのやろか」と迷う場面は少なくない。今日は、介護職と医療行為の線引きについて、ワイなりに整理していく。


医行為とは何か

自動血圧計と歯ブラシが置かれたテーブルで思案顔の女性職員と、奥に見える利用者さんと点滴スタンド

※画像はイメージです(AI生成)

日常会話では「医療行為」という言葉もよく使われるが、医師法などの法的な線引きでは「医行為」という言葉が使われとる。この記事では、厚生労働省の通知に合わせて「医行為」を基準に説明していく。

厚生労働省の通知では、医行為とは「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為」とされとる。医師法などにより、医師や看護師などの資格を持たん者が、反復継続する意思をもって医行為を行うことは禁止されとる。

つまり、ある行為が医行為にあたるかどうかの判断基準は、「利用者さんの体に危害を及ぼすおそれがあるかどうか」や。ただし、この判断は個々の行為の内容や利用者さんの状態によって変わる場合があり、「原則として医行為でない」とされる行為でも、病状が不安定であるなど専門的な管理が必要な場合には、例外的に医行為とされることがある。


介護職が実施できること

厚生労働省の通知では、判断に迷いやすい行為のうち、原則として医行為でないと考えられるものが整理されとる。代表的な例として、次のようなものが挙げられることが多い。

  • 体温測定(電子体温計・耳式体温計などを用いる場合)
  • 自動・半自動血圧測定器を用いた血圧測定、パルスオキシメーターの装着
  • 軽い切り傷やすり傷、やけどなどの応急的な処置(専門的な判断が必要な場合を除く)
  • 爪切り(爪や周囲の皮膚に異常がなく、糖尿病等による専門的な管理が必要でない場合)
  • 耳垢の除去(耳垢塞栓の除去を除く)
  • 日常的な口腔ケア(重度の歯周病等がない場合)、有床義歯(入れ歯)の着脱・洗浄
  • 食事(とろみ食を含む)の介助

さらに、令和7年12月の通知では、専門的な管理が不要と医師や看護職員が確認した場合に限り、次のような行為も原則として医行為でないと整理された。

  • お薬カレンダーへ一包化された薬などをセットすること
  • 服薬の直前にPTPシートから薬剤を取り出すこと
  • 専門的な管理が必要ないと確認された皮膚への湿布の貼付(麻薬・向精神薬やステロイド外用剤などは対象外)

これらはあくまで「原則として医行為でないと考えられる」行為であり、褥瘡の処置など専門的な管理が必要な場合は対象外や。また、医師・歯科医師・薬剤師・看護職員から本人や家族へ「この介助はできる」と伝えられとることや、本人・家族からの具体的な依頼があることが前提になっとる。具体的な項目や条件は、厚生労働省の平成17年通知、令和4年12月通知、令和7年12月通知などで確認する必要がある。

お薬カレンダーへ薬をセットする練習を現場で行った実例は、在宅復帰を目指したお薬カレンダーの服薬管理に書いとる。


条件付きで実施できること(喀痰吸引・経管栄養)

喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)や経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養)は、原則として医行為にあたるとされとる。一定の教育・実地研修を修了した介護福祉士や、喀痰吸引等研修を修了して認定特定行為業務従事者となった介護職員等は、登録事業者のもとで、決められた条件を満たした場合に実施できる。

ポイント

研修を修了しとらん介護職員は、喀痰吸引や経管栄養を行うことはできん。しかも、研修や認定を受けた個人だけで完結する制度やない。登録された事業者(登録喀痰吸引等事業者・登録特定行為事業者)の中で、医師の文書による指示、医療職との連携、個別の実施計画、本人や家族への説明と同意といった体制が整っとることが必要になる。「研修を修了しとる職員」「修了しとらん職員」がいる施設もあるため、自分がどこまで実施できる立場か、正しく把握しとく必要がある。

経鼻経管栄養で使うチューブの仕組みと、介護現場で見てきたことは、マーゲンチューブ(経鼻胃管)と経管栄養を解説した記事にも書いとる。


原則として実施できないこと・条件付きの領域

次のような行為は、原則として医師や看護師などの資格を持つ者が行うべきものとされとる。法令上の例外がない限り、介護職員が実施することはできん。

  • 点滴の穿刺・抜針・差し替え
  • インスリンの注射そのもの
  • 膀胱留置カテーテルの挿入や、カテーテル本体・蓄尿バッグの定期的な交換

ただし、次のような行為は「原則できない」と単純に言い切れず、条件によって扱いが変わる。

酸素療法について

酸素吸入の開始・停止や、介護職の判断による流量変更は原則できん。ただし、酸素が利用者さんへ流入しとらん状態での、あらかじめ医師から指示された流量への設定、酸素マスク・経鼻カニューレの装着などの準備、酸素離脱後の片付けは、条件付きで原則として医行為でないとされとる。酸素がすでに流れとるマスクを装着する行為は「酸素吸入の開始」に含まれ、医師・看護職員または本人が行うとされとる。

膀胱留置カテーテルについて

蓄尿バッグからの尿廃棄や、尿量・尿の色の確認、外れたテープの貼り直しは、条件付きで原則として医行為でないとされとる。さらに令和7年12月の通知では、蓄尿バッグの破損や尿漏れ、バッグが外れた場合に限り、医師または看護職員の立会いのもとで安全に行えると事前に確認された実施者が、未開封・未使用の蓄尿バッグを接続することも、厳しい条件下で可能とされた。ただし、これは定期的な交換やカテーテル本体の交換とは別の話や。

⚠ カテーテルのミルキングについて

カテーテルのしごき洗浄(ミルキング)は、ここで確認した厚生労働省の通知に明示された行為やない。「施設でやっとるから介護職もできる」と自己判断せず、医師・看護職員・管理者へ確認する必要がある。

血糖測定について

介護職員が利用者さん本人の指などへ穿刺して血糖を測定することは原則できん。一方、持続血糖測定器のセンサーの貼付や、測定器に表示された数値の読み取りは、条件付きで原則として医行為でないとされとる。また、本人が自分で血糖測定・インスリン注射を行う場合に、あらかじめ医師から指示されたタイミングでの声かけや見守り、注射器の受け渡し、片付け(針を抜く行為を除く)なども、条件付きで可能とされる場合がある。これらは、血糖値や食事摂取量などが不安定でないことが前提になる。状態が不安定な場合や、表示された数値から医学的な判断が必要な場合は、介護職員だけで対応してはいけない。


現場で質問されやすい行為の整理

現場でよく質問される行為を、大まかな傾向として整理すると次のようになる。

行為 大まかな扱い
口腔ケア 原則できる(重度の歯周病等がない場合)
爪切り 原則できる(異常や専門的管理が不要な場合)
耳垢の除去(耳垢塞栓の除去を除く) 原則できる
湿布・お薬カレンダーへのセット・PTPシートからの取り出し・内服介助 条件(専門的管理不要の確認、本人家族の依頼など)を満たす場合に実施できる
喀痰吸引・経管栄養 研修修了・事業者登録など体制が整っている場合に実施できる
酸素吸入の開始・停止、流量変更(判断によるもの) 原則できない
酸素未流入時の、指示された流量への準備段階の設定 条件付きでできる場合がある
膀胱留置カテーテルの挿入・本体交換 原則できない
蓄尿バッグの尿廃棄・尿量や色の確認 条件付きでできる
破損・外れた際の未開封・未使用の蓄尿バッグ接続 令和7年通知の厳しい条件下でできる場合がある
カテーテルのミルキング 通知に明示なし。医師・看護職員・管理者へ要確認
介護職が本人へ穿刺して行う血糖測定 原則できない
持続血糖測定器のセンサー貼付・数値確認 条件付きでできる場合がある
本人の自己測定・自己注射への声かけや見守り 条件付きでできる場合がある
インスリン注射そのもの 原則できない
点滴の穿刺・抜針・差し替え 原則できない

あくまで大まかな傾向であり、利用者さんの状態や行為の細かい内容によって扱いが変わる場合がある。断定的な自己判断はせず、迷ったら必ず確認する姿勢が大事や。


施設によって業務内容が違って見える理由

施設によって、介護職員が担っとる業務の範囲が違って見えることがある。これは、研修修了者の有無や、看護師の配置状況、施設の方針などによって、実際に任される業務が変わってくるためやと考えられる。

⚠ 注意しとくべきこと

「あの施設ではやっとる」「前の職場ではやっとった」というのは、法律上問題ないことの証明にはならん。研修修了などの条件を満たさんまま行っとる場合や、そもそも施設側の運用に問題がある場合もありうる。自分の職場のルールと、法律や通知の内容を混同せんように気をつける必要がある。


困った時は管理者や看護師へ確認する

介護職の基本的な役割は、生活支援や利用者さんの様子の変化への気づき、報告・連携や。ただし、法令上の資格・研修・事業者体制などを満たした場合に限り、喀痰吸引等を実施することもある。20年、介護の現場に立ってきて思うんは、「これはやってもええんかな」と迷った時点で、自己判断せず、管理者や看護師に確認することが一番大事やということ。判断に迷う行為を、なんとなくの雰囲気や慣習で続けてまうことが、一番危ない。

迷った行為を記録だけで終わらせず、口頭でも報告・確認する大切さは、介護で「記録に書いたから大丈夫」が危険な理由にも書いとる。


まとめ

介護職が実施できること、条件付きでできること、原則できないこと。この線引きは、利用者さんの安全を守るためだけやなく、介護職員自身を守るためにも大事な知識や。

「これはできるんやろか」と迷った時は、自己判断せず、管理者や看護師に確認する。それが、介護職として利用者さんとも自分自身とも向き合う、基本の姿勢やとワイは思う。