夜勤介護マンの日記

介護現場で感じたことを、体験ベースで書いています

職場の近くへ引っ越した直後に施設移転…元主任の「人生の皮肉」にプロの背中を見た話

 

この記事は、夜勤介護マンが介護現場で実際に体験・見聞きした出来事をもとに書いています。個人が特定されないよう、一部内容を変更・再構成しています。介護の実態をリアルにお伝えすることを目的としており、特定の施設・個人を批判する意図はありません。

近くなるために引っ越したのに、
また遠くなった話

村田さんは、職場の近くへ引っ越した。通勤を楽にしたかったから。

でもその後、施設の移転が決まった。近くなるために引っ越したのに、また遠くなった。

人生って、真面目に考えた選択ほど、ズレる時がある。村田さんのあの困り顔を見ながら、ワイはそんなことを思った。

この記事でわかること

  • 通勤を楽にするために引っ越した、元主任・村田さんの話
  • 引っ越した直後に施設移転が決まる、という人生の皮肉
  • 「真面目に考えた選択ほどズレる」という、誰にでもある感覚
  • それでも村田さんが見せた、淡々とした受け止め方
  • 20年の現場で、ワイが村田さんから学んだこと

通勤を、楽にしたかっただけやった

村田さんという、元主任がいた。以前、老健大会の発表前にトイレで吐き気と戦いながら、それでも壇上に立った、あの人や。肩書きを失っても責任感だけは残ってた、ワイが尊敬する先輩や。

その村田さんが、ある時、引っ越しをした。理由は、シンプルやった。通勤を、楽にしたかった。それだけや。

介護の仕事をしてる人なら、分かると思う。通勤時間って、地味にしんどい。特に夜勤がある仕事や。夜勤明けのフラフラの体で、長い時間かけて家に帰るのは、こたえる。逆に、夜勤に入る前の通勤も、できれば短い方がええ。

村田さんも、長年それを感じてたんやと思う。「もう、職場の近くに住もう」と決めた。通勤の負担を減らして、その分、体を休めたり、自分の時間を持ったりしたい。真面目に、自分の生活を考えた末の選択やった。

引っ越しは、簡単なことやない。お金もかかるし、手続きも面倒や。荷造りして、新しい家に移って、生活を整える。それなりの労力をかけて、村田さんは職場の近くへ移ってきた。「これで通勤が楽になる」と、ホッとしてたはずや。

そして、施設移転が決まった

ところが——や。

村田さんが引っ越して、しばらく経った頃。施設の移転が、決まった。

施設の移転というのは、たまにある話や。建物の老朽化、運営の都合、いろんな理由で、施設が別の場所に移ることがある。職員からしたら、勤務地が変わるという、大きな出来事や。

そして、その移転先は——村田さんが、わざわざ近くに引っ越してきた、今の場所から、遠ざかる方向やった。

移転の話が出たとき、ワイは村田さんの顔を、思わず見てしまった。

村田さんも、ちょうど同じタイミングで、ワイの方を見た。目が合った。お互い、何を考えてるか、言わんでも分かった。

「……村田さん、この前、引っ越したばっかりですよね」とワイが言うと、村田さんは、なんとも言えん顔で「そうやねん」とだけ言った。

近くなるために、お金と労力をかけて引っ越した。その直後に、施設が遠くなることが決まった。結果として、村田さんの通勤は、引っ越す前より遠くなってしまった。

村田さんの、あの困り顔

あのときの村田さんの顔を、ワイは今でも覚えてる。

怒ってるわけやない。嘆いてるわけでもない。ただ、なんとも言えん、困ったような、苦笑いのような顔やった。「こんなことってあるんやな」という顔。人生の予想外に、どう反応してええか分からん、あの顔や。

あれだけ真面目に、自分の生活を考えて選んだのに。その選択が、一番効かない方向に転んだ。

もし村田さんが引っ越してなかったら。あるいは、もう少し待ってから引っ越してたら。結果は、まったく違ってた。でも、そんなことは、誰にも分からへん。移転の話なんて、引っ越しを決めたときには、影も形もなかったんやから。

村田さんは、何も間違ったことはしてない。通勤を楽にしたい、という真っ当な理由で、ちゃんと考えて引っ越した。なのに、結果は裏目に出た。本人の努力や判断とは、まったく関係ないところで、状況がひっくり返った。

真面目に考えた選択ほど、ズレる

この村田さんの話、ワイは他人事やと思えへんかった。

人生って、こういうことが、ある。真面目に考えて選んだことほど、なぜかズレる。適当に決めたことは、案外うまくいったりするのに、「よし、ちゃんと考えて決めたぞ」というものに限って、予想外の方向に転ぶ。

家を買った直後に転勤が決まる。新しい車を買った翌週に、新型が発表される。資格を取ったら、その資格が要らん部署に異動になる。——誰にでも、一つや二つ、こういう「皮肉な経験」があるんやないやろか。

村田さんは、後でこう言うてた。

「こういうのは、もう、しゃあないわ。引っ越したときは、それが一番ええと思てたんやから。間違ってへん」

その言い方が、妙に潔くて、ワイは「さすやな」と思った。

そうなんや。村田さんの言う通り、引っ越した時点では、それが一番ええ選択やった。未来が変わったのは、後の話や。「あのときの判断」は、間違ってなかった。ただ、その後に、誰にも読めへん変化が起きただけや。

でも、村田さんは淡々としてた

ワイが一番印象に残ってるのは、村田さんが、この皮肉な出来事を、淡々と受け止めてたことや。

普通やったら、もっと愚痴ってもええ。「なんでこのタイミングやねん」「引っ越し代、返してくれ」と、文句の一つも言いたくなる。ワイやったら、絶対グチグチ言うてると思う。

でも村田さんは、ひとしきり困った顔をした後は、「しゃあない」と受け入れて、淡々と新しい通勤に対応していった。引っ越し先から、遠くなった施設へ、また通い始めた。文句を、ぶつけ続けることはなかった。

変えられへんことに、いつまでも腹を立てへん。それも、長く現場に立ってきた人間の、強さなんやと思う。

これは、あの老健大会のときに見た村田さんの姿と、どこか通じてた。吐き気と戦いながらも、やるべきことを淡々とやり切る。今回も、予想外の皮肉に見舞われても、腹を立て続けるんやなく、淡々と現実に対応する。感情に飲まれず、目の前のことをこなしていく強さが、この人にはあった。

人生のズレと、どう付き合うか

村田さんの引っ越しの話から、ワイが学んだことがある。人生の「ズレ」との、付き合い方や。

  • その時点での判断は、間違ってない 後から状況が変わって裏目に出ても、「あのときの選択」自体が間違ってたわけやない。未来が読めへんのは、誰だって同じ。結果だけ見て、過去の自分を責めても、しゃあない。
  • 変えられへんことに、腹を立て続けない 起きてしまったこと、自分にどうにもできんことに、いつまでも怒っていても、何も変わらへん。村田さんみたいに「しゃあない」と受け入れて、次に進む方が、結局は楽や。
  • 真面目に考えたこと自体に、価値がある 結果がどうであれ、自分の生活を真剣に考えて選んだ、その姿勢に意味がある。ズレたからって、真面目に考えたことが無駄になるわけやない。
  • 予想外は、誰の身にも起きる 自分だけが運が悪いわけやない。人生の皮肉は、みんなが経験すること。そう思えば、少しは気が楽になる。

村田さんは、こういうことを、言葉で説明したわけやない。ただ、その背中で見せてくれた。予想外の出来事に、どう向き合うか。腹を立てず、淡々と、それでも前に進む。あの老健大会のときと同じで、村田さんはまた、ワイに大事なことを教えてくれた。

あの人は、やっぱりプロやった

近くなるために引っ越したのに、また遠くなった。村田さんの身に起きたことは、ただの不運な皮肉や。誰のせいでもない。どうしようもないことやった。

でも、その皮肉な出来事への、村田さんの向き合い方に——ワイはまた、この人の「プロらしさ」を見た気がした。仕事だけやない。こういう、人生のままならなさへの対応の仕方にも、その人の生き方が出る。

やきんかいごへのサポート

近くなるために引っ越したのに、また遠くなる。そんな皮肉な話やのに、村田さんは淡々としてた。

ワイやったら絶対グチグチ言うてる場面で、「しゃあないわ、間違ってへんかったんやから」と受け入れる。その潔さに、ワイはまた一つ、学ばせてもろた。

ワイはこのブログを、顔も名前も出さずに書き続けとる。現場のリアルや、ワイが現場で出会った人らのことを、「なかったこと」にしたくないからや。村田さんみたいな人がいたことも、ここに残しておきたい。

もしこの記事が「人生のズレも、まあええか」と、少し肩の力を抜くきっかけになったなら——夜勤明けのワイに、コーヒー一杯だけ奢ってくれへんか。それがまた、次を書く理由になる。気が向いたときだけでええ。

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近くなるために引っ越して、また遠くなる。人生には、こういう、笑うしかない皮肉がある。

でも村田さんは、それを「しゃあない」と受け入れて、淡々と、また遠くなった職場へ通い続けた。腹を立て続けることも、過去の自分を責めることもなく。

真面目に考えた選択ほど、ズレる時がある。でも、ズレたからといって、その選択が間違ってたわけやない。未来が読めへんだけや。大事なのは、ズレたあとに、どう向き合うか——村田さんは、それを背中で教えてくれた。

あなたにも、「真面目に考えたのにズレた」経験が、きっとあると思う。そんなとき、村田さんの「しゃあないわ、間違ってへんかったんやから」を、思い出してもらえたら。ほんの少し、気が楽になるかもしれへん。

やきんかいご ── 完