夜勤介護マンの日記
類天疱瘡はうつる?介護現場で知っておきたい症状と接触時の注意点
「触って大丈夫なん?」「手袋いる?」——介助の場面ごとに、何をどう判断すればいいのかを整理します。
この記事は、2026年8月27日時点で確認した公的機関および専門学会の情報をもとにした、一般的な解説です。
個別の診断、治療、処置の方法を示すものではありません。実際の介助では、主治医と看護師の指示、施設の感染対策マニュアル、その方の個別ケア手順を優先してください。
この記事の結論
類天疱瘡そのものは、人から人へうつる病気ではありません。ただし、水疱・びらん・滲出液・血液・粘膜・使用後のガーゼなどに触れる可能性がある介助では、標準予防策として手袋などを使用します。
担当している利用者さんに、水ぶくれがいくつもできている。カルテには「類天疱瘡」と書かれている。この状況で、介護職の頭に浮かぶ疑問はだいたい三つに集約されます。
うつるのか。触っても大丈夫なのか。手袋は必要なのか。
答えは冒頭に書いたとおりです。類天疱瘡は感染症ではないので、同じ空間にいることや、日常的に会話することで職員へうつることはありません。恐れて距離を取る必要はない病気です。
一方で、「うつらない」という一点だけを覚えて、破れた水疱に素手で触れてしまうと、それはまた別の問題を招きます。皮膚が失われた場所は、細菌が付きやすい状態になっているからです。
つまり、判断の基準は病名ではありません。これからどの部位に、どんな形で触れるのか。そこで手袋の要否が決まります。
この記事では、類天疱瘡がどんな病気なのか、どんな症状が出るのか、介助の場面ごとに何を防護すべきか、何を観察して誰に報告するのかを、順番に整理していきます。
この記事で分かること
- 類天疱瘡が感染症ではなく自己免疫性の病気である理由
- 介護職が知っておきたい主な症状と、病名を判断してはいけない理由
- 「うつらない」ことと「素手で触れてよい」ことが別である理由
- 介助場面ごとの手袋・エプロンなどの考え方(比較表つき)
- 皮膚を傷つけないために介助で気をつけること
- 看護師や医師へ報告すべき変化と、記録に残したい観察項目
- 介護現場で起こりやすい誤解と、その整理のしかた
結論|類天疱瘡は人から人へうつらない
類天疱瘡は感染症ではなく自己免疫性疾患
類天疱瘡は、自分の体の免疫が自分の皮膚を攻撃してしまうことで起こる病気です。医学的には「自己免疫性水疱症」と呼ばれます。
感染症は、ウイルスや細菌といった病原体が体の外から入ってきて起こります。だからこそ、その病原体が人から人へ移動すれば、別の人にも同じ病気が起こる。これが「うつる」という現象です。
類天疱瘡には、その病原体がありません。原因は本人の免疫の側にあります。日本皮膚科学会も、類天疱瘡はどの病型であってもうつらないと明記しています。
難病情報センターの解説でも、遺伝することは通常ないと説明されています。感染もしないし、家族に受け継がれるものでもない、という位置づけです。
ですから、同じフロアで過ごすことも、会話することも、手をつないで歩行介助することも、それ自体が感染の経路になることはありません。
うつらなくても病変へ素手で触れない理由
ここで話が終われば単純なのですが、現場ではもう一歩必要になります。
水疱が破れると、その部分の皮膚表面が失われて「びらん」という状態になります。皮膚というのは体を守るバリアなので、そこが破れているということは、外からの細菌が入りやすくなっているということです。
日本皮膚科学会も、破れた水疱の跡に細菌が付着すると傷が治りにくくなることがあると説明しています。
つまり、注意すべきなのは「類天疱瘡が職員にうつること」ではなく、「開いた皮膚に、余計なものを持ち込まないこと」のほうです。守る対象が逆向きだと考えると分かりやすいかもしれません。
加えて、滲出液や血液には、その方が持っている他の病原体が含まれている可能性を常に否定できません。これは類天疱瘡に限った話ではなく、あらゆる利用者さんに共通する考え方です。
病名ではなく介助内容で手袋を判断する
介護現場でよく起こるのが、「類天疱瘡と聞いたから、この人の介助は全部手袋で」という決め方です。気持ちは分かりますが、判断のしかたとしては正確ではありません。
標準予防策の考え方では、防護具を使うかどうかは病名で決めません。血液、体液、分泌物、傷のある皮膚、粘膜に触れる可能性があるかどうかで決めます。
この基準に当てはめると、こうなります。
手袋の判断基準
- 水疱、びらん、滲出液、血液、粘膜、使用済みのガーゼや被覆材に触れる可能性がある介助 → 手袋を使用する
- 正常な皮膚に触れるだけで、上記への接触が予想されない介助 → 類天疱瘡という診断だけを理由に、一律で手袋が必須とは限らない
ただし、施設の感染対策マニュアル、看護師の指示、その方の個別ケア手順が定められている場合は、そちらが優先されます。
逆に言えば、「うつらないんだから素手でいい」も同じくらい雑な判断です。病名ではなく介助内容で決める。これが、この記事を通しての一貫した基準になります。
類天疱瘡とはどのような病気なのか
自己抗体によって皮膚に水疱ができる仕組み
皮膚は、表面側の「表皮」と、その下の「真皮」という層に大きく分かれています。この二つの境目には基底膜という部分があり、表皮と真皮を接着させる役割を担っています。
難病情報センターの解説によれば、類天疱瘡ではこの基底膜部にあるタンパクに対して自己抗体ができてしまいます。自己抗体というのは、本来なら外敵に向かうはずの抗体が、自分自身の体の成分を攻撃してしまうものです。
水疱性類天疱瘡の場合、標的になるのはBP180やBP230と呼ばれるタンパクだと説明されています。名前を覚える必要はありません。押さえておきたいのは、表皮と真皮をくっつけている接着部分が攻撃を受けるということです。
接着が緩めば、そこに隙間ができ、体液がたまります。それが皮膚の表面から見たときの「水ぶくれ」です。
自己抗体がなぜ作られるのか、その詳しい原因はまだ分かっていないとされています。生活習慣や介護の方法が原因で起こる病気ではない、という点は、家族への説明でも押さえておきたいところです。
水疱性類天疱瘡は高齢者に多い
介護職がこの病気を知っておく価値があるのは、発症年齢の分布によります。
難病情報センターによれば、類天疱瘡の発症年齢は60歳以上に多く、とくに70代から90代の高齢者に多く見られます。国内の患者数は7000人から8000人ほどと推定され、軽症の方を含めればさらに多いと予想されています。高齢人口の増加に伴い、患者数は増加傾向にあると考えられています。
年齢層を見れば分かるとおり、これは介護施設の利用者さんの年齢と重なります。担当することが十分にあり得る病気だということです。
なお、類天疱瘡は指定難病162に位置づけられており、医療費助成の対象になる場合があります。制度の詳細はケアマネジャーや相談員が扱う領域ですが、そういう枠組みがあることは知っておいて損はありません。
類天疱瘡には複数の病型がある
「類天疱瘡」という言葉は、実は複数の病気をまとめた呼び方です。難病情報センターでは、水疱性類天疱瘡、粘膜類天疱瘡、後天性表皮水疱症の三つに大別されると説明されています。
- 水疱性類天疱瘡:大部分の症例がここに分類されます。体幹や手足を中心に、かゆみを伴う紅斑と緊満性水疱ができます。
- 粘膜類天疱瘡:眼や口腔の粘膜を中心に水疱やびらんが生じます。のど、鼻、陰部、肛門周囲に及ぶこともあります。
- 後天性表皮水疱症:肘や膝など、外からの力がかかりやすい部位に水疱を繰り返します。発症年齢は30代から60代に多いとされています。
この記事では、介護現場で遭遇する可能性がもっとも高い水疱性類天疱瘡を中心に説明します。病型の細かい分類まで介護職が把握する必要はありません。
天疱瘡や感染性の水疱とは見た目だけで区別できない
紛らわしい点を一つ。「天疱瘡」と「類天疱瘡」は名前が似ていますが、同じ病気ではありません。自己抗体が攻撃する場所が異なり、水疱のできる深さも経過も違います。
ただし、この違いを介護職が現場で見分ける必要はありませんし、見分けられるものでもありません。
さらに重要なのは、水疱ができる病気は他にもあるということです。帯状疱疹、水痘、疥癬、薬疹、虫刺され、褥瘡など、皮膚に変化が出る原因はたくさんあります。このなかには、実際に人から人へうつるものも含まれています。
ここは特に注意
「水ぶくれができている=類天疱瘡だろう」と介護職が判断してはいけません。診断は医師が検査に基づいて行うものです。逆に、「類天疱瘡と診断されている人だから、新しくできた発疹も類天疱瘡だろう」という思い込みも危険です。別の皮膚トラブルが重なっている可能性があるためです。
皮膚に見慣れない変化があったときに介護職がすべきことは、診断ではなく報告です。ここは最後まで変わりません。
介護職が知っておきたい主な症状
強いかゆみや赤い皮疹が先に現れることがある
水疱性類天疱瘡では、体幹や手足に、かゆみを伴う赤い皮疹が現れます。難病情報センターでは「浮腫性紅斑」、つまり少し盛り上がったような赤みとして説明されています。
この段階では、まだ水ぶくれが目立たないこともあります。見た目だけなら、湿疹やじんましんと区別がつきにくい場合があるということです。
介助のなかで気づけるサインとしては、本人が同じ場所を繰り返し掻いている、更衣のときに「かゆい」と訴える、といった様子が挙げられます。かゆみが強いと、夜間に眠れないことにもつながります。
掻き壊しは皮膚をさらに傷つけます。かゆみの訴えは「よくあること」で流さず、記録に残す価値のある情報です。
パンパンに張った緊満性水疱ができる
水疱性類天疱瘡の水疱には特徴があります。日本皮膚科学会の説明では、大型でパンパンに張った、破れにくい水ぶくれと表現されています。この張った状態を「緊満性」と呼びます。
比較的破れにくいとはいえ、破れないわけではありません。摩擦や圧迫が加われば破れます。介助の場面は、まさに摩擦や圧迫が生じる場面です。
そして、水疱は外からの力がかかった部位にできることがあるとも説明されています。ぶつけた、こすれた、といった刺激が引き金になり得るということです。
この二点が、後の章で扱う「皮膚を傷つけない介助」の根拠になります。
水疱が破れるとびらんや滲出液が見られる
水疱が破れると、その下の皮膚がむき出しになり、びらんになります。じくじくとした液体、つまり滲出液が出ることもあります。
この状態の皮膚は、細菌が付着しやすくなっています。日本皮膚科学会が、びらんに細菌が付くと傷が治りにくくなるため清潔にする必要があると説明しているのは、この点を指しています。
介護職の視点で言えば、びらんがある場所は、触れ方が変わる場所だと捉えるのが実務的です。同じ腕でも、正常な皮膚の部分と、びらんのある部分とでは扱いが違います。
口や目などの粘膜に症状が出る場合もある
症状は皮膚だけとは限りません。水疱性類天疱瘡でも、口の中にびらんが見られることがあると説明されています。粘膜類天疱瘡では、眼や口腔が主な部位になります。
口の中に痛みがあれば、食事に影響します。食事量が急に落ちた、特定の食形態を嫌がるようになった、といった変化の背景に粘膜の症状が隠れていることがあります。
逆に言えば、口腔ケアや食事介助を担当している介護職は、粘膜の変化に最初に気づける立場にいます。「食べない理由」を探すときの選択肢として、頭の片隅に置いておく価値があります。
観察は必要だが介護職が病名を判断しない
ここまで症状を並べてきましたが、目的をあらためて確認します。
これらを知っておくのは、異変に気づいて報告するためであって、診断するためではありません。
「緊満性水疱の特徴に当てはまるから類天疱瘡だ」という判断も、「特徴と違うから類天疱瘡ではない」という判断も、どちらも介護職の役割を超えています。実際、後天性表皮水疱症は水疱性類天疱瘡と区別することがしばしば困難だと説明されているほどで、専門医でも見た目だけでは判別しきれない領域です。
介護職に求められるのは、「昨日はなかった水ぶくれが右前腕に三つある」と正確に伝えることです。それが何なのかを決めるのは、その先の職種の仕事になります。
「うつらない」と「素手で触れてよい」は別の話
類天疱瘡が他人へ感染するわけではない
もう一度、切り分けを確認します。
類天疱瘡は、その方の免疫が自分の皮膚の接着部分を攻撃することで起こっています。この自己抗体が職員の体に入って、職員の皮膚を攻撃し始める、といったことは起こりません。
接触でも、飛沫でも、空気でも、類天疱瘡が他人にうつることはない。ここは何度確認しても変わらない事実です。
ですから、この病気を理由に居室を分ける、食堂の席を離す、といった対応をとる必要はありません。そういう扱いは、根拠がないだけでなく、本人の生活を不必要に狭めることになります。
びらんには二次的な細菌感染が起こることがある
一方で、破れた水疱の跡には細菌が付着することがあります。これを二次感染と呼びます。
ここで混同しやすいのが、「二次感染が起こる=類天疱瘡は感染症」という誤解です。まったく別の話です。
整理すると、こうなります。
- 類天疱瘡そのもの:うつらない。原因は本人の免疫にある
- びらんへの細菌感染:起こり得る。ただしこれは、皮膚が開いている状態に細菌が付くという別の現象
二次感染が起きると、傷が治りにくくなります。だからこそ、清潔を保つ必要があると説明されているわけです。
そして、その細菌をびらんに持ち込む可能性がある経路のひとつが、職員の手です。手袋を使う理由は、職員が自分を守るためだけではなく、利用者さんの開いた皮膚を守るためでもあります。
標準予防策は感染症と診断された人だけに行うものではない
標準予防策の核心は、「すべての人の血液・体液・分泌物・傷のある皮膚・粘膜は、感染性があるものとして扱う」という考え方です。
厚生労働省の感染対策マニュアルでも、血液や体液、排泄物を扱うときには手袋やエプロン、必要に応じてマスクやゴーグルの着用が求められ、「1ケア1手洗い」の徹底が基本とされています。
ここで大事なのは、この基準が診断名を前提にしていないという点です。感染症と診断された利用者さんにだけ行うものではありません。診断がついていない段階でも、感染性が確認されていない場合でも、同じ基準が適用されます。
この考え方が身についていれば、類天疱瘡という病名を初めて聞いた場面でも、判断に迷う幅はかなり狭くなります。びらんに触れるなら手袋。触れないなら病名だけを理由には求められない。それだけの話になるからです。
水疱の内容液から類天疱瘡がうつるわけではない
「水ぶくれの中の液体に触ったら、自分にも水ぶくれができるのでは」という不安は、現場でときどき耳にします。
これは起こりません。水疱の内容液に触れたことで、職員が類天疱瘡を発症することはありません。
ただし、内容液や滲出液は体液です。標準予防策の対象になります。だから手袋を使う。理由は「類天疱瘡がうつるから」ではなく、「体液だから」です。
この違いは細かいようですが、意味があります。理由を正しく理解していれば、他の場面にも同じ基準を持ち込めるからです。病名ごとに対応を覚えていくやり方は、いつか必ず知らない病名にぶつかります。
介護場面別|手袋が必要になる目安
ここからは実際の介助場面に落とし込みます。まず全体像を表で示し、そのあと判断の理由を補足します。
| 介助場面 | 想定される接触 | 一般的な防護の考え方 | 事前に確認すること |
|---|---|---|---|
| 会話・見守り | 接触なし | 防護具は不要。通常どおり関わる | 特になし |
| 正常な皮膚への接触 (手をとる、肩に触れる) |
健常な皮膚のみ | 病名だけを理由に手袋が必須とは限らない。前後の手指衛生は行う | どこに病変があるか |
| 移乗・体位交換 | 状況により病変に触れる可能性あり | 病変部に触れる可能性があれば手袋。触れる範囲を事前に把握する | 病変部の位置、支持してよい部位 |
| 水疱・びらん周辺の介助 | びらん、滲出液 | 手袋を使用 | 触れてよい範囲、担当職種 |
| 軟膏塗布・ガーゼ交換 | びらん、滲出液、被覆材 | 手袋を使用。実施の可否そのものを確認する | 介護職が行ってよい処置か |
| 滲出液で汚れた衣類・寝具の交換 | 体液が付着した繊維 | 手袋を使用。衣服に付着しそうならエプロンも検討 | 汚染物の取り扱い手順 |
| 入浴・清拭 | 広範囲の皮膚、びらん、滲出液 | 手袋を使用。エプロンやガウンも検討 | 入浴の可否、洗い方、湯温、石けんの指定 |
| 口腔ケア | 粘膜、唾液、出血の可能性 | 手袋を使用。飛散があればマスクも検討 | 口腔内病変の有無、使用物品 |
| 排泄介助 | 排泄物、陰部・肛門周囲の粘膜 | 手袋を使用(類天疱瘡の有無にかかわらず) | 陰部周囲に病変があるか |
| 飛散が予想される処置 | 体液の飛沫 | 手袋に加え、エプロンやガウン、目・鼻・口の防護を検討 | 実施者、立ち会いの要否 |
表は横にスクロールできます。ここに示したのは一般的な考え方です。施設の感染対策マニュアル、看護師の指示、個別ケア手順が定められている場合は、そちらが優先されます。
正常な皮膚へ触れるだけの介助
手をとる、肩に手を添える、背中をさすって声をかける。こうした関わりは、健常な皮膚に触れるだけであり、体液や病変への接触が予想されません。
この場面で、類天疱瘡という診断名だけを理由に手袋を必須とする根拠はありません。むしろ、必要のない場面まで手袋を着けることには別の問題もあります。素手で触れられないという扱いが、本人に伝わってしまうことがあるからです。
ただし条件が一つ。その方の病変がどこにあるかを把握していることです。把握していなければ、「正常な皮膚だけに触れた」と言い切れません。
そして、手袋を着けない場合でも、介助の前後の手指衛生は省略しません。
水疱やびらんへ触れる可能性がある介助
病変部に直接触れる、あるいは触れる可能性がある介助では、手袋を使用します。判断に迷ったときは、着けるほうを選んで差し支えありません。
ポイントは「触れるかどうか」ではなく「触れる可能性があるかどうか」です。介助は予定どおりに進まないことがあります。体位が崩れる、本人が急に動く、支える位置を変えざるを得なくなる。そうした場面で、結果的に病変に手が届くことは起こり得ます。
また、手袋を着けたからといって、病変に触れてよいことにはなりません。手袋は接触を許可する道具ではなく、必要な接触を安全に行うための道具です。
滲出液や血液が付着したガーゼ、衣類、寝具の取り扱い
使用後のガーゼや被覆材、滲出液で汚れた衣類やシーツも、体液が付着したものとして扱います。直接皮膚に触れていなくても、防護の対象になります。
回収したものは、施設で決められた方法で処理します。汚染物をどの袋に入れ、どこへ運ぶかは施設ごとに手順が定められているはずですので、そこに従ってください。
汚れた寝具を引き寄せるときに、体液が自分の衣服に付着することがあります。範囲が広そうな場合は、エプロンの着用も検討します。
口腔ケアや粘膜へ触れる介助
口腔ケアは、粘膜と唾液に触れる介助です。これは類天疱瘡の有無にかかわらず、手袋を使用する場面にあたります。
口腔内にびらんがある場合は、加えて痛みへの配慮が必要になります。歯ブラシやスポンジが病変に当たれば、痛みや出血につながります。使用する物品や方法に指示が出ている場合は、それに従ってください。
ブラッシングで水滴が飛ぶことが予想される場面では、マスクの着用も検討します。
入浴、清拭、着替え、オムツ交換
この四つは、いずれも広い範囲の皮膚に触れる介助です。病変が体幹や四肢に多発している場合、接触を避けきることは現実的ではありません。手袋を使用する場面と考えてよいでしょう。
入浴と清拭については、防護具の話とは別に、洗い方の指示を確認する必要があります。詳しくは次の章で扱います。
着替えは、摩擦が生じやすい介助です。袖を通すときに前腕をこすることになりますし、襟を通すときに首や肩に力がかかります。手袋の話だけで済ませず、動作そのものへの配慮が必要になります。
オムツ交換は、排泄物を扱う時点で手袋が必要です。陰部や肛門周囲に病変がある場合は、清拭の力加減にも注意します。
エプロン、ガウン、目や口の防護を検討する場面
手袋以外の防護具は、「体液が自分の衣服や顔にかかりそうか」で判断します。
滲出液が多い、範囲が広い、汚れた寝具を大きく動かす。こうした条件がそろえば、エプロンやガウンを検討します。飛沫が飛ぶ可能性がある処置では、目や鼻、口の防護も選択肢に入ります。
一方で、類天疱瘡という診断だけを理由に、マスクやガウンを常時着用したり、隔離を行ったりする必要はありません。感染症ではないからです。過剰な防護は、本人と家族に「うつる病気なのだ」という誤解を与えます。
手袋交換と手指衛生
手袋の使い方には、いくつか外してはいけない原則があります。
手袋を使うときの原則
- 汚染された部位に触れた手袋のまま、清潔な部位へ移らない。同じ利用者さんの体の中でも、部位が変われば交換する
- 使い捨て手袋を洗って再使用しない
- 手袋を外したあとの手指衛生を省略しない。手袋には目に見えない破損があり得るうえ、外すときに手が汚染されることがある
- 利用者さんが変われば必ず交換する
- 手袋を着けたまま、ドアノブ、記録用紙、スマートフォンなどに触れない
とくに三つ目は、現場で崩れやすい部分です。手袋を着けていた安心感から、外したあとの手洗いが省かれる。厚生労働省の感染対策マニュアルが「手洗いに始まって手洗いに終わる」と表現しているとおり、手袋は手指衛生の代わりにはなりません。
手指衛生を徹底しながら現場の流れも守る難しさは、介護職の感染症対策と手洗いをめぐる現場の話でも扱っています。
皮膚を傷つけないために介助で注意すること
こする、引っ張る、ぶつける刺激を避ける
日本皮膚科学会は、わずかであっても外からの力が加わった部位に水疱ができることがあると説明しています。だからこそ、外的な刺激を避けることが日常生活上の注意として挙げられています。
介助は、程度の差はあれ、必ず皮膚に力を加える行為です。持ち上げる、支える、引き寄せる、拭く。そのどれもが、皮膚にとっては刺激になります。
具体的に避けたいのは、次の三つです。
- こする:清拭で往復させる、タオルで強く拭き取る
- 引っ張る:腕を引いて起き上がらせる、衣類を強く引き上げる
- ぶつける:ベッド柵、車椅子のアームレストやフットレスト、テーブルの角
手足や肘、膝をぶつけないようにすることも、学会の説明に挙げられています。移乗の動線に何があるかを確認しておくだけでも、ぶつける機会は減ります。
移乗や体位交換では病変部の位置を確認する
移乗介助では、どこを支えるかを決めなければなりません。その判断の前提として、病変がどこにあるかを知っている必要があります。
背中に病変があるのに背部を支える、前腕に水疱があるのに前腕を握る。位置を知らなければ、こうしたことが起こります。
体位交換でも同じです。病変のある側を下にして長時間過ごせば、圧迫が続きます。除圧の方法に指示が出ている場合は、それを確認してください。
申し送りやケア記録で病変部の位置が共有されているか、共有されていない場合は共有できないか。これは職員間で確認しておきたい点です。
圧迫や摩擦による皮膚トラブルと除圧の基本は、褥瘡(床ずれ)の原因・予防と背抜きの手順でも整理しています。
衣類、ベルト、オムツ、シーツの摩擦へ注意する
学会の説明では、擦れるような下着や服、きついベルトを避けるよう案内されています。難病情報センターでも、水疱やびらんがある時期にはやわらかい素材の着脱しやすい衣服が勧められています。
介助のなかで見直せる点としては、次のようなものがあります。
- ゴムや縫い目が皮膚に強く当たっていないか
- オムツのテープやギャザーが食い込んでいないか
- シーツにしわが寄って、体重で押しつけられていないか
- 着脱に無理な力が要る衣類になっていないか
衣類の選択は本人や家族の希望も関わる部分です。介護職が勝手に変えるのではなく、気づいた点を伝えて相談する形が現実的でしょう。
入浴や清拭では洗い方と温度を自己判断しない
清潔を保つことは、二次感染を防ぐうえで意味があります。ただし、その方法を介護職が独自に決めるのは適切ではありません。
入浴の可否、湯温、石けんの種類、泡での洗浄か流すだけか、病変部を避けるのか含めるのか。これらは皮膚の状態と治療方針によって変わります。
「清潔にしたほうがいいと書いてあったから、しっかりこすって洗った」という対応は、外的刺激を避けるという原則と真正面から衝突します。清潔にすることと、こすることは別です。
指示が出ていない場合は、実施する前に看護師へ確認してください。
病変へテープを直接貼らない
これは学会が明確に案内している点です。外的刺激を避けるため、絆創膏を直接貼らず、病変全体をガーゼで包み、その上から絆創膏やネットで固定するよう説明されています。
テープを剥がすときに皮膚が持っていかれる。それが新たな水疱やびらんにつながる。この連鎖を断つための注意です。
介護職が直接ガーゼを当てる立場にない場合でも、この原則は知っておく価値があります。たとえば、他の目的で貼られたテープが病変の近くにある場合など、気づいて伝えられるからです。
水疱を介護職の判断でつぶさない
大きな水疱を見ると、つぶしたほうが楽になるのではないかと考えたくなることがあります。これは介護職が行う判断ではありません。
水疱の膜は、その下の皮膚を覆っている状態です。つぶせば、そこは開いた傷になります。二次感染のリスクが上がる方向です。
水疱への対応方針は、医師の判断によって決まります。処置が必要であれば、その指示に基づいて行われます。介護職の役割は、水疱を見つけて報告することであり、処置を判断することではありません。
軟膏、消毒薬、被覆材を勝手に変更しない
手元にある軟膏を塗る、市販の消毒薬を使う、別のガーゼに替える。これらはいずれも避けてください。
類天疱瘡の治療では、外用薬が使われることがあります。何をどこに、どのくらい塗るかには意図があります。他の目的の薬を重ねれば、その意図が崩れます。
被覆材も同じです。素材によって、湿潤の保ち方も剥がすときの負担も異なります。
「良かれと思って」の行動が、この領域では逆に働きます。介護職ができるのは、決められた方法を確認し、そのとおりに実施し、変化を伝えることまでです。
処置を含めて介護職ができること・原則できないことは、介護職と医療行為の線引きで詳しく整理しています。
看護師や医師へ確認・報告すべき場面
介助前に確認しておきたい項目
初めて担当するとき、あるいは病変の状態が変わったときに、あらかじめ確認しておきたい項目を挙げます。
介助前チェックリスト
- 病変の場所(体のどこに、どのくらいの範囲であるか)
- 触れてはいけない部分、支持を避ける部位
- 入浴・清拭の可否と、実施する場合の方法
- 塗り薬や被覆材の有無と、その取り扱い(誰が、いつ行うか)
- 使用する防護具(手袋、エプロンなど)の指定
- 処置を担当する職種(介護職が行ってよい範囲)
- 変化があった場合の報告先と、報告の緊急度
これらが不明なまま介助に入ると、判断の根拠がないまま手を動かすことになります。忙しい時間帯であっても、最初の一回は確認しておくほうが結果的に早く済みます。
新しい水疱や急な広がりを見つけたとき
新しい水疱の出現は、病気の勢いに関わる情報です。治療の効果を判断する材料にもなります。
報告するときは、可能な範囲で具体的に伝えます。「水ぶくれが増えています」よりも、「昨日はなかった水ぶくれが、右前腕に三つできています」のほうが、受け取る側の判断材料になります。
範囲が急に広がった場合も同様です。数日単位で見ていて明らかに違うと感じたなら、その感覚は報告に値します。
びらん、出血、滲出液の変化があるとき
水疱が破れてびらんになった、滲出液の量が増えた、色が変わった、出血している。これらは皮膚の状態が変化したサインです。
とくに、滲出液の量が急に増えた場合や、性状が変わった場合は伝えてください。ガーゼや衣類への付着の程度も、量を伝える手がかりになります。
「じくじくしているだけだから、次の処置のときでいいだろう」と自己判断で先送りしないほうが無難です。
赤み、腫れ、熱感、痛み、臭い、発熱があるとき
この五つは、二次感染を疑う際に着目される所見です。
- 病変の周囲が赤みを増している
- 腫れてきている
- 触れると熱く感じる
- これまでなかった痛みの訴えがある
- 普段と違う臭いがする
- 体温が上がっている
これらが見られる場合は、優先度を上げて報告してください。皮膚の変化と全身状態の変化が同時に起きているときは、とくに早めの共有が必要です。
なお、これらの所見をもって介護職が「二次感染だ」と判断する必要はありません。伝えるべき所見として押さえておけば十分です。
赤み・腫れ・熱感など、皮膚の細菌感染で見られる変化は、高齢者の蜂窩織炎と介護現場での早期発見のサインでも解説しています。
口腔内や目の周囲に症状があるとき
口の中や目の周囲の症状は、皮膚の症状よりも見落とされやすい部分です。衣服に隠れていない代わりに、口腔内は開けてもらわなければ見えません。
口腔ケアのときに、頬の内側、歯ぐき、舌に赤みやびらんがないかを見ておくと、変化に気づきやすくなります。
目の症状としては、充血、目やに、まぶたの違和感などがあります。「目が開けにくそう」「しきりに目をこすっている」といった様子も、伝える価値のある情報です。
食事量や水分摂取に影響が出ているとき
口腔内に病変があると、食事が苦痛になります。難病情報センターでも、粘膜症状が強いときには固い食べ物を避けるよう案内されています。
食事量が減った、水分を嫌がる、特定のものだけ残す、時間がかかるようになった。こうした変化は、介護職が最初に気づく領域です。
高齢の方の場合、食事量と水分量の低下は短期間で全身状態に影響します。皮膚の話とは別の問題として、記録と報告を行ってください。
介護記録へ残したい観察項目
報告と記録は別の作業です。口頭で伝えたことも、記録に残してはじめて次の勤務者へつながります。
記録に残したい項目
- 発見日時
- 病変の場所(左右、部位を具体的に)
- 新しい水疱の有無
- 水疱が保たれているか、破れているか
- おおよその大きさと数
- 滲出液の有無と量、出血の有無、臭い
- 周囲の赤み、腫れ、熱感
- 本人のかゆみや痛みの訴え(本人の言葉のまま)
- 食事や水分摂取への影響
- 実施した報告の内容と、受けた指示
最後の項目は忘れられがちですが、重要です。誰に何を伝え、どう指示されたかが残っていれば、次の職員は同じ確認を繰り返さずに済みます。
写真で記録する場合
皮膚の状態を写真で残す運用がある施設もあります。その場合でも、個人のスマートフォンで勝手に撮影することは避けてください。撮影の可否、使用する機器、保存と共有の方法は施設の規定に従い、本人や家族への説明と個人情報の保護を優先します。
治療中の利用者を介助するときに知っておきたいこと
治療はステロイドなどで病気の勢いを抑える
治療の全体像を、概要だけ押さえておきます。
難病情報センターの説明によれば、類天疱瘡の治療は、原因となる自己抗体の産生と働きを抑える免疫抑制療法が中心です。中等症以上では副腎皮質ステロイドの内服が治療の柱になり、副作用を減らす目的で免疫抑制薬を併用することもあります。
勢いを抑えきれない場合には、血漿交換療法や免疫グロブリン大量静注療法、ステロイドパルス療法が併用されることもあります。軽症例ではステロイドの外用のみでコントロールできる場合もあると説明されています。
ここで押さえておきたいのは、治療内容は人によって違うということです。同じ類天疱瘡でも、外用のみの方と内服中の方では、注意すべき点が変わります。
治療薬の変更や中止を介護職が判断しない
学会と難病情報センターの双方が、ステロイド内服の自己判断による変更や中止を避けるよう明記しています。急に水疱が再発することがあるためです。
介護職が薬を減らしたり止めたりする場面はないはずですが、実務のなかで近い状況は起こり得ます。本人が「今日は調子がいいから飲まなくていい」と言う、家族から服薬について相談される、といった場面です。
そのときに、介護職の側で「一回くらいなら」と判断しないことが大切になります。服薬に関わる相談は、看護師や医師へつないでください。
治療内容によっては感染症や副作用への注意が必要
ステロイドの内服には副作用があります。難病情報センターでは、感染症にかかりやすくなること、糖尿病、肥満、骨粗鬆症、胃潰瘍、高血圧などへの注意が挙げられています。発熱や体調不良があれば早めに受診するようにとも案内されています。
ここで用語の整理を一つ。「感染症にかかりやすくなる」というのは、治療によって免疫の働きが抑えられているためです。類天疱瘡が感染するという意味ではありません。
介護職の実務に落とすと、フロアで感染症が流行しているときには、この方の体調変化に普段以上に注意する、という形になります。骨粗鬆症への注意は、転倒予防の観点とも重なります。
もう一点、参考として。難病情報センターでは、2型糖尿病治療薬であるDPP-4阻害薬を服用している方や、免疫チェックポイント阻害薬による治療を受けているがん患者さんで、水疱性類天疱瘡の発症頻度が比較的高いことが分かってきていると説明されています。ただし詳細な因果関係は不明とされており、介護職がこれを根拠に何かを判断する必要はありません。
服薬状況と体調変化を医療職へ共有する
介護職が治療に貢献できるのは、日々の様子を伝えることです。
薬を飲めているか、飲みにくそうにしていないか、飲んだあとに変わった様子はないか。こうした情報は、日常的に接している職員でなければ拾えません。
体調面では、発熱、食事量の低下、活気のなさ、皮膚以外の不調の訴えなどが共有すべき情報になります。
治療の方針を決めるのは医師です。ただし、その判断材料の一部は介護の現場から上がっていきます。そこが介護職の役割だと考えると、日々の観察の位置づけがはっきりします。
介護現場で起こりやすい類天疱瘡の誤解
最後に、混同されやすい点をまとめておきます。どれも、現場で実際に起こりやすい思い違いです。
水疱ができる病気は、どれもうつる
水疱ができる病気には、帯状疱疹や水痘のように感染するものもあれば、類天疱瘡のように感染しないものもあります。見た目が似ていても、原因はまったく別です。混同しやすいのは、皮膚の症状が似ているためです。診断名を確認することが、対応を決める出発点になります。
類天疱瘡の利用者には、あまり近づかないほうがよい
感染しない病気なので、距離を取る理由はありません。むしろ、不必要に避ける態度は本人に伝わります。かゆみや痛みを抱えている時期に、周囲から遠ざけられる経験が重なるのは、本人にとって負担でしかありません。
うつらないのだから、水疱に素手で触れてもよい
感染性と、傷への配慮は別問題です。びらんは細菌が付きやすい状態であり、手袋は職員を守ると同時に、利用者さんの皮膚を守るためのものでもあります。「うつらない」を「何をしてもよい」に読み替えないことです。
類天疱瘡の人は、どの介助でも同じ防護具が必要
防護具は病名ではなく、その介助で何に触れるかで決まります。会話や見守りと、入浴介助を同じ基準で扱う必要はありません。病名で一律に決めるほうが考えなくて済むぶん楽ですが、正確ではありません。
手袋を着けていれば、手洗いはしなくてよい
手袋は手指衛生の代わりにはなりません。目に見えない破損があり得ますし、外すときに手が汚れることもあります。着用前と外したあとの手指衛生は、どちらも省略できません。
水疱は早くつぶしたほうが治りが早い
水疱の膜は、その下の皮膚を覆っています。つぶせば開いた傷になり、二次感染のリスクが上がる方向です。対応の判断は医師が行います。介護職の役割は、見つけて伝えることです。
市販の消毒薬や軟膏を塗っておけばよい
処方されている外用薬には、皮膚の状態と治療方針に応じた意図があります。別のものを重ねれば、その意図が崩れます。良かれと思った行動が逆に働く典型例です。
見た目で類天疱瘡かどうか判断できる
診断は、医師が検査に基づいて行います。専門医でも、後天性表皮水疱症と水疱性類天疱瘡の区別が困難な場合があるとされています。介護職が見た目で判断できる領域ではありません。
滲出液が出ているだけなら、報告しなくてよい
滲出液の量や性状の変化は、皮膚の状態を判断する材料になります。「いつもと同じ」に見えても、量が増えていれば情報です。毎日見ていると変化に鈍くなりやすいので、記録と照らして確認する習慣が助けになります。
まとめ|恐れる必要はないが、標準予防策は必要
持ち帰っていただきたい点は五つです。
- 類天疱瘡そのものは、人から人へうつりません。自己免疫性の病気であり、病原体が存在しないためです。
- 水疱やびらんには、二次的な細菌感染への注意が必要です。これは類天疱瘡が感染することとは別の現象です。
- 手袋は病名ではなく、病変や体液へ触れる可能性で判断します。正常な皮膚に触れるだけなら一律には求められず、びらんや滲出液に触れる可能性があれば使用します。
- 摩擦や外力を避け、介護職の判断で水疱をつぶしたり処置を変えたりしません。テープを病変に直接貼らないことも含みます。
- 新しい水疱や滲出液の変化は、観察・記録して看護師や医師へ報告します。診断ではなく、正確に伝えることが介護職の役割です。
類天疱瘡は、うつる病気として身構える必要はありません。同じ空間で過ごし、手を取り、これまでどおりに関わって差し支えない病気です。
そのうえで、皮膚の状態と介助の内容に応じた標準予防策は必要になります。守るべきは職員の安全であると同時に、開いた皮膚を抱えている利用者さんの側でもあります。
迷ったときは、病名ではなく「この介助で何に触れるか」に立ち返ってください。その一点が整理できていれば、たいていの場面で判断がつきます。
よくある質問
類天疱瘡の利用者と同じ部屋にいるとうつりますか。
うつりません。類天疱瘡は病原体によって起こる病気ではないため、同じ空間で過ごすこと自体が感染の経路になることはありません。居室を分ける、席を離すといった対応をとる必要もありません。
利用者の手や腕へ素手で触れても大丈夫ですか。
その部分に水疱やびらんがなく、健常な皮膚であれば、類天疱瘡という診断だけを理由に手袋が必須になるわけではありません。ただし、どこに病変があるかを把握していることが前提です。把握していない状態で触れれば、「正常な皮膚だけに触れた」とは言えません。触れる前後の手指衛生は行ってください。
移乗介助では必ず手袋が必要ですか。
一律に必要とは限りません。支える部位が健常な皮膚で、病変に触れる可能性がなければ、手袋なしで行える場合もあります。ただし移乗は姿勢が崩れやすく、予定外の場所に触れることがあります。病変の位置と支持する部位を事前に確認し、触れる可能性があるなら着用してください。
水疱の中の液体から類天疱瘡がうつりますか。
うつりません。内容液に触れたことで職員が類天疱瘡を発症することはありません。ただし内容液は体液にあたるため、標準予防策の対象として手袋を使用します。理由は「うつるから」ではなく「体液だから」です。
入浴や清拭では手袋が必要ですか。
広い範囲の皮膚に触れるため、病変がある方では手袋を使用する場面と考えてよいでしょう。滲出液が多い場合は、エプロンの着用も検討します。あわせて、入浴の可否、湯温、洗い方についての指示を事前に確認してください。清潔にすることと、こすって洗うことは別です。
水疱を見つけたら、介護職がガーゼを貼ってもよいですか。
施設で介護職が行ってよいと定められている範囲を超えて、独自の判断で被覆材を当てることは避けてください。なお、日本皮膚科学会は絆創膏を病変に直接貼らないよう案内しており、病変全体をガーゼで包んだうえから固定する方法が示されています。まずは看護師へ報告し、指示を受けてください。
水疱が破れていたら、何を報告すればよいですか。
部位、大きさ、数、滲出液や出血の有無と量、周囲の赤みや腫れ、熱感、本人の痛みの訴えを伝えてください。あわせて、発見した日時と、前回確認したときとの違いも分かると判断材料になります。「破れています」だけでは、受け取る側が状態を把握できません。
類天疱瘡の利用者は隔離する必要がありますか。
必要ありません。感染症ではないため、隔離の根拠がありません。過剰な防護や隔離は、本人と家族に「うつる病気だ」という誤った認識を与え、生活の範囲を不必要に狭めることにつながります。必要なのは隔離ではなく、介助内容に応じた標準予防策です。
参考資料(2026年8月27日確認)
- 公益社団法人日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 類天疱瘡(水疱症)」
日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 類天疱瘡(水疱症)質問一覧 - 同「Q4 どんな症状をおこすのですか?」
類天疱瘡の症状に関する解説ページ - 同「Q5 うつりますか?」
類天疱瘡の感染性に関する解説ページ - 同「Q10 日常生活でどのような注意をすればいいでしょうか?」
類天疱瘡の日常生活上の注意に関する解説ページ - 難病情報センター「類天疱瘡(後天性表皮水疱症を含む。)(指定難病162)」
難病情報センター 類天疱瘡の病気の解説(一般利用者向け) - 厚生労働省「高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版(2019年3月)」
高齢者介護施設における感染対策マニュアル(PDF) - 厚生労働省老健局「介護現場における感染対策の手引き 第3版(令和5年9月)」
介護現場における感染対策の手引き(PDF) - CDC「Summary of Recommendations(Isolation Precautions)」
CDC 標準予防策に関する推奨のまとめ(英語)
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