※この記事は、20年以上の介護現場経験をもとに、一般的な情報提供を目的として書いています。医学的な診断・治療については、必ず医師・専門家にご相談ください。治療法や分類は変わる場合があり、本記事の情報は執筆時点のものです。特定の個人・施設を否定する意図はありません。
介護知識 — 皮膚・褥瘡
褥瘡(床ずれ)を、
徹底解説。
ステージ・原因から、シーツのシワ・背抜きまで——現場の予防を、全部書く。
▷ この記事でわかること
- 褥瘡(床ずれ)とは何か——なぜ皮膚が壊れてしまうのか
- 褥瘡ができやすい体の部位(特に仙骨部)
- 重症度を表すステージ分類(1〜4+DTI・判定不能)
- 褥瘡の4つの原因——圧迫・ずれ・摩擦・湿潤
- 体位変換・シーツのシワ・背抜きなど、現場の予防のすべて
介護の現場で、絶対に避けて通れへんもの。
そのひとつが、褥瘡(じょくそう)や。「床ずれ」と言うた方が、伝わりやすいかもしれへん。
寝たきりや、車椅子で過ごす時間が長い人にとって、褥瘡は非常に身近なリスクや。
そして——褥瘡は「できてから治す」より「できないように防ぐ」ことが、何倍も大切な、予防がすべてと言ってもええ分野や。
今日は、褥瘡とは何か、なぜできるのか、そして現場でどう防ぐのかを、できるだけ分かりやすく、しっかり書く。
褥瘡(床ずれ)って何やろ

褥瘡という言葉、介護の現場では日常的に出てくるけど、一般的にはあまり馴染みがないかもしれへん。
簡単に言うと——長時間、同じ体勢でいることで、体の一部が圧迫され続け、皮膚やその下の組織が壊れてしまう状態や。
人間の体は、ずっと同じ場所が圧迫されると、その部分の血流が途絶える。
血が通わなくなると、皮膚や、皮膚の下の組織に酸素や栄養が届かなくなって、そこが壊死(えし=組織が死ぬこと)してしまう。これが褥瘡や。
健康な人なら、寝てる間も無意識に寝返りを打って、同じ場所が圧迫され続けないようにしている。
でも、寝たきりの人や、自分で体を動かせへん人は、その寝返りができへん。だから、同じ場所が圧迫され続けて、褥瘡ができてしまう。
介護が必要な高齢者にとって、褥瘡は非常に身近なリスクのひとつなんや。
どこに出やすいんやろ
褥瘡は、どこにでもできるわけやない。骨が出っ張っていて、皮膚が直接圧迫されやすい部位に起きやすい。
骨と、ベッドや椅子の間に皮膚が挟まれて、強く圧迫されるからや。
褥瘡ができやすい部位
【あおむけで寝ている場合】
・仙骨部(せんこつぶ/お尻の中央あたり)・かかと・後頭部・肩甲骨・ひじ
【横向きで寝ている場合】
・耳・肩・腰の骨の出っ張り・くるぶし・ひざの内側や外側
【座っている場合】
・坐骨(ざこつ/座ったときに体重がかかるお尻の骨)・尾骨(びこつ)
この中でも——特に仙骨部は、一番褥瘡ができやすく、現場でも最も注意する部位や。
あおむけで寝ると、お尻の中央の仙骨に体重が集中する。寝てる時間が長い人ほど、ここが危ない。
逆に言えば、「褥瘡ができやすい場所」が分かっていれば、そこを重点的にチェックすればええ。
オムツ交換や体位変換のたびに、仙骨部・かかと・くるぶしあたりを「赤くなってへんか?」と見る。これが、早期発見の第一歩になる。
ステージで重症度が変わる
褥瘡には、重症度を示す「ステージ分類」というものがある。
国際的には、アメリカの団体(NPIAP。以前はNPUAPと呼ばれていたが、2019年に名称変更された)などが作った分類が広く使われていて、ステージ1から4まである。
ステージが上がるほど、傷が深く、重症になる。
- ステージ1:赤みが消えない 皮膚はまだ破れていないけど、赤みが消えない状態。指で押しても赤みが消えへんのが特徴(押して白くなるなら、まだ褥瘡やない可能性が高い)。これが褥瘡の始まりのサイン。この段階で気づけるかどうかが、その後の悪化を防ぐ分かれ目になる。
- ステージ2:皮膚が破れる 皮膚が破れて、浅い傷になった状態。水ぶくれ(水疱)ができることもある。皮膚の表面から、少し深いところまでダメージが及んでいる段階。
- ステージ3:脂肪組織まで達する 皮膚の下の脂肪組織まで達した状態。傷が深くなって、穴のようにえぐれて見えることがある。この段階になると、治療にかなりの時間がかかる。
- ステージ4:筋肉・骨にまで達する 筋肉や骨、腱にまでダメージが及んだ、最も重篤な状態。壊死した組織が黒くなり、感染リスクも非常に高くなる。治療が長期化し、命に関わることもある。
ステージが上がるほど、治りにくくなる。だから、ステージ1のうちに気づくことが、何より大切や。
ステージ1の「赤み」を見逃さずに、すぐ対応すれば、悪化を防げる。逆に、ここを見逃すと、あっという間に深い傷になってしまう。
ステージだけやない——DTIと判定不能
実は、褥瘡の分類には、ステージ1〜4のほかに、近年重視されている2つの状態がある。
ちょっと専門的になるけど、大事なことやから書いておく。
ステージ1〜4以外の分類
・DTI(深部損傷褥瘡)疑い:表面の皮膚は一見大丈夫そうに見えるのに、皮膚の「奥(深部)」で組織が損傷している状態。表面が紫っぽい、暗赤色になっていることがある。見た目より深くダメージが進んでいることがあり、要注意。
・判定不能(Unstageable):傷が壊死組織などで覆われていて、深さがどれくらいか判定できない状態。
特に怖いのがDTI(深部損傷褥瘡)や。
表面はそんなにひどく見えへんのに、皮膚の奥では、もっと深刻なダメージが進んでいることがある。「見た目は軽そうやのに、実は重症」というパターンや。
表面の皮膚が、紫や暗い赤色になっていたら、DTIの可能性がある。「ちょっと色がおかしいな」と感じたら、自己判断せず、看護師や医師に相談することが大切や。
なお、日本では、褥瘡の状態を点数で評価する「DESIGN-R®(デザインアール)」という独自のスケールも、医療・介護現場で広く使われている(2020年版でDTIや感染の項目が追加された)。
こういうツールを使って、褥瘡の深さ・大きさ・感染などを、チームで共通の言葉で評価しているんや。
なぜ起きるんやろ——4つの原因
褥瘡の主な原因は、「圧迫」「ずれ」「摩擦」「湿潤」の4つ</strong >と言われている。
この4つを知っておくと、予防のポイントも見えてくる。
褥瘡の4つの原因
・圧迫:同じ体勢が続いて、骨の出っ張りと寝具の間で皮膚が押しつぶされる。これが基本。
・ずれ:体がずり落ちようとする力で、皮膚が引っ張られる。皮膚の表面と内部が逆方向に引っ張られ、血管がねじれて血流が悪くなる。
・摩擦:シーツや衣類との擦れで、皮膚の表面が傷つく。
・湿潤(しつじゅん):汗や尿で皮膚が常に濡れた状態になり、皮膚がふやけて傷つきやすくなる。
この4つは、単独でも褥瘡の原因になるけど、重なることでリスクが一気に上がる。
たとえば、オムツで湿った皮膚(湿潤)が、ベッドを起こしたときのずれで引っ張られ(ずれ)、さらに同じ場所が圧迫され続ける(圧迫)——こうなると、褥瘡はあっという間にできてしまう。
特に、見落とされやすいのが「ずれ」や。
圧迫は「同じ場所を押してる」と分かりやすいけど、ずれは目に見えにくい。でも、このずれが、褥瘡の大きな原因になる。後で出てくる「背抜き」は、この「ずれ」を解消するための、めちゃくちゃ大事なケアや。
褥瘡ができやすい人
同じように寝ていても、褥瘡ができやすい人と、できにくい人がいる。
リスクが高いのは、こういう人や。
褥瘡のリスクが高い人
・自分で寝返りや体位変換ができない人(寝たきり、麻痺がある人など)
・痩せていて、骨が突出している人(骨と皮膚の間のクッションが少ない)
・栄養状態が悪い人(皮膚の再生力が落ちている)
・むくみ(浮腫)がある人(皮膚が弱くなっている)
・尿・便失禁があり、皮膚が湿りやすい人
・感覚が鈍く、痛みや不快を訴えられない人(認知症などで)
特に、痩せて骨が突出している人と、栄養状態が悪い人は要注意や。
痩せていると、骨とベッドの間に「肉のクッション」が少ないから、骨の出っ張りに圧が集中する。栄養が足りていないと、皮膚が傷ついても再生しにくい。
食事量が落ちている利用者さんは、褥瘡リスクも上がる——というのは、現場でずっと感じてきたことや。
予防① 体位変換と体圧分散
ここからは、褥瘡予防の具体策や。現場で実際にやってることを、ひとつずつ書いていく。
まず、予防の基本中の基本が——体位変換や。
体位変換とは、定期的に体の向きを変えて、同じ部位への圧迫を分散させること。
昔から「2時間おき」が目安とされてきた。同じ場所が圧迫され続ける時間を区切ることで、血流が途絶えるのを防ぐ。
ただ、人や状態によって、適切な間隔は変わる。体圧分散マットを使っている場合は、もう少し間隔をあけられることもある。施設や訪問看護では、その人に合わせた体位変換の計画を立てている。
そして、体位変換と並んで重要なのが、体圧分散マットレス(エアマットなど)や。
これは、体にかかる圧力を、できるだけ広い面積に分散させて、一点に集中させないための寝具や。空気で膨らんだり縮んだりして、圧のかかる場所を自動で変えてくれるタイプもある。
寝たきりの人には、こうした体圧分散の道具が、強い味方になる。
予防② シーツのシワを作らない
ここからは、「知ってる人は知ってるけど、意外と見落とされがち」な予防策を書く。
まず——シーツのシワを作らないことや。
「たかがシーツのシワやろ?」と思うかもしれへん。でも、これが意外と侮れへん。
ベッドに寝ている人の下に、シーツのシワがあると、そのシワが当たっている部分の皮膚が、ずっと圧迫され続ける。
硬く寄ったシワは、まるで細いロープの上に寝ているようなもので、その一本の線に圧が集中する。さらに、シワは摩擦の原因にもなる。
圧迫と摩擦、褥瘡の原因のうち2つを、シーツのシワが生んでしまうんや。
だから、シーツや防水シーツ、オムツが、体の下でシワにならないように、ピンと張って整える。
体位変換やオムツ交換のたびに、「シワになってへんか?」と、さっと手で確認して伸ばす。
ほんの小さなことやけど、この積み重ねが、褥瘡を防ぐ。地味やけど、大事な現場の習慣や。
予防③ 背抜き——見落とされがちな大切なケア
そして、これも本当に大切やのに、家庭の介護では見落とされがちなのが——「背抜き」や。
これは、ぜひ知っておいてほしい。
背抜きとは何か。説明するで。
ベッドの背もたれを起こす(ギャッジアップする)と、利用者さんの体は、ベッドの動きにつられて、ずり下がろうとする。
このとき、背中やお尻の皮膚は、ベッドに押し付けられたまま、体の重みで引っ張られる。つまり、皮膚に「ずれ」と「圧迫」が、かかったまま残ってしまう。
この状態を放っておくと、せっかく他の予防をしていても、ずれによって褥瘡ができてしまう。
そこで行うのが、背抜きや。
背抜きのやり方(基本)
① ベッドの背もたれを起こした後に行う
② 利用者さんの上半身を、一度ベッドから少し離す(前傾させる、または横に傾ける)
③ 背中とベッドの間に手を入れ、背中・お尻・体の下にできた「ずれ」や圧を、そっと逃がす
④ 衣類やシーツのつっぱり・シワも一緒に整える
要するに、背中とマットの間にこもった「ずれの力」を、いったん抜いてあげることや。
これをやるかやらないかで、皮膚にかかる負担が、まったく変わる。ベッドを起こしたら背抜きをする——これを習慣にするだけで、褥瘡のリスクをぐっと減らせる。
背中だけやなく、お尻(尻抜き)や、かかと(踵抜き)も同じ考え方や。
体の向きを変えたり、ベッドを操作したりした後は、「どこかに、ずれや圧が残ってへんか?」と意識する。これが、現場のプロがやってる、地味やけど効くケアなんや。
予防④ スキンケアと湿潤対策
4つの原因のうちの「湿潤」——皮膚が濡れた状態を防ぐことも、大事な予防や。
汗や、尿・便で皮膚が濡れたままになると、皮膚がふやけて、もろくなる。そこに圧迫やずれが加わると、簡単に傷ついてしまう。
だから——
スキンケア・湿潤対策のポイント
・オムツ交換をこまめに行い、皮膚を濡れたままにしない
・尿や便で汚れたら、優しく洗い流して清潔にする(こすらない)
・皮膚を乾燥させすぎないよう、保湿剤でケアする
・汗をかいたら、こまめに拭く・着替える
・必要に応じて、皮膚を保護するクリームなどを使う(看護師に相談)
ポイントは、「濡れすぎ」も「乾きすぎ」も、どちらも皮膚を弱くするということ。
清潔を保ちつつ、適度な潤いを守る。汚れを拭くときは、ゴシゴシこすらず、優しく。摩擦も褥瘡の原因やからな。
尿失禁・便失禁がある人は、特にこの湿潤対策が重要になる。陰部やお尻まわりの清潔を、こまめに保つことが、褥瘡予防につながる。
予防⑤ 栄養管理
意外と見落とされがちやけど、栄養管理も、立派な褥瘡予防や。
皮膚は、毎日少しずつ新しく生まれ変わっている。その皮膚を作るには、材料が要る。
その材料が、タンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養や。
栄養が足りていないと、皮膚の再生力が落ちて、ちょっとした圧迫でも傷つきやすく、しかも治りにくくなる。
実際、食事量が落ちている利用者さんは、褥瘡ができやすい、というのは現場の実感や。
逆に、しっかり栄養が摂れている人は、皮膚も丈夫で、多少のことでは褥瘡ができにくい。
食が細くなった人には、栄養補助食品(高カロリー・高タンパクの飲み物やゼリーなど)で栄養を補うこともある。
「褥瘡予防」というと、体位変換やマットばかりに目が行きがちやけど——体の内側から皮膚を強くする「栄養」も、同じくらい大事なんや。
できてしまったら、どうするか
どれだけ予防しても、褥瘡ができてしまうことはある。
そのときは、どうするか。
まず、医療職に報告を
褥瘡は、自己判断で市販薬を塗ったり、消毒したりするのは禁物です(かえって悪化させることがあります)。「赤くなっている」「皮膚が破れている」と気づいたら、まず看護師・医師に報告してください。褥瘡の治療は、深さや感染の有無によって、専門的な処置が必要です。
褥瘡の治療は、医師や看護師の領域や。傷の状態に合わせて、適切な薬や、傷を覆う材料(ドレッシング材)を選んで処置する。
介護職や家族の役割は、「早く気づいて、医療につなげること」、そして「これ以上悪化させないよう、予防(除圧・清潔・栄養)を続けること」や。
大事なのは、ステージ1の「赤み」のうちに気づくこと。
ここで気づいて対応すれば、多くは悪化を防げる。見逃して、ステージ2、3と進んでしまうと、治療は一気に大変になる。
だからこそ、「できてから」やなく「できる前」、そして「できかけ」で気づくことが、何より大切なんや。
毎日の「気づき」が一番の武器
ここまで、褥瘡について、いろいろ書いてきた。
最後に、一番伝えたいことを書く。
褥瘡予防で、何より大切なのは——毎日のケアの中での、ちょっとした「気づき」や。
高い体圧分散マットを使っても、立派な計画を立てても、それだけでは褥瘡は防げへん。
オムツ交換のときに「あれ、ここ赤いな」と気づく。体位変換のときに「シーツがシワになってる」と直す。ベッドを起こしたら背抜きをする。「最近食欲ないな、栄養大丈夫かな」と気にかける。
この一つひとつの小さな気づきと、ひと手間が、褥瘡を防ぐ一番の武器になる。
褥瘡は、いったんできると、本人にとって本当につらい。痛いし、治療も長い。場合によっては命に関わる。
でも、その多くは、日々のケアで防げるものや。
「赤くなってへんか」と見る目、「シワになってへんか」と直す手、「ずれてへんか」と気にかける意識——それを持つ人が、その人のそばに一人いるだけで、褥瘡は大きく減らせる。
褥瘡予防は、特別なことやない。毎日の、地道な気づきの積み重ねや。
それが、その人の皮膚を、そして尊厳を守ることにつながる。これは、20年現場でやってきたワイの、まぎれもない実感や。
家族の介護で褥瘡が心配な人、現場で褥瘡予防に向き合ってる介護職の人——この記事が、「褥瘡は防げる」と知って、予防のヒントをつかむきっかけになったなら、夜勤明けにこれを書いてる甲斐があるってもんや。
気になる皮膚の変化があれば、早めに看護師・医師に相談してほしい。
この記事、もし「読んでよかった」と思ってもらえたなら——
夜勤明けのワイに、コーヒー一杯だけ奢ってもらえませんか。
それだけで、次の記事を書く燃料になります。
※OFUSEの投げ銭ページへ移動します。金額は自由です。