※これは20年以上前の体験をもとにした内容です。制度や運用は現在と異なる部分があります。
※特定の個人・施設を否定する意図はありません。
※見出し画像は内容をもとにしたイメージ画像です。

ある日突然、追いかけ回された
地元出身のおばあさんが利用者さんにいた。
入所した時から顔見知りで、祖父の孫やということも伝えていた。
最初は普通に介護をしていたし、特に問題もなかった。
でも、ある日から変わった。
廊下で会うたびに、「おまハン!」と言いながら追いかけ回されるようになった。
きっかけは分からない。
前の日まで普通やったのに、急にそうなった。
物とられ妄想は、こうして起きる
介護の現場でよく聞くのが、「物を盗られた」という訴えやった。
財布がない。大事な物がなくなった。あの人がやった。
心当たりのない職員が疑われることも多い。
でも、これには理由がある。
人は、自分の物を自分でコントロールできていると感じることで安心する。
財布の場所が分かる。自分で取り出せる。自分で管理できている。
その感覚が、日常の安心を支えている。
過介護が、その感覚を奪っていく
必要以上の介助が続くと、本人が「自分でやる」機会が減っていく。
物の場所を把握する前に、誰かが動かしている。
取り出す前に、誰かがやってくれている。
気づいたら、自分の物がどこにあるか分からなくなっている。
自分でコントロールできている感覚が、少しずつ薄れていく。
記憶障害が重なると「盗られた」になる
そこに認知症による記憶障害が加わると、話が変わってくる。
「物がない」→「自分では動かしていない」→「誰かが持っていった」
この流れが、本人の中では自然な結論になる。
悪意があるわけでも、おかしいわけでもない。
記憶と状況をつなごうとした結果が、「盗られた」「あの人がやった」になる。
ワイが追いかけ回されたのも、きっとそういうことやったんやと思う。
孫やと知っていたはずの人が、ある日から「怪しい人」に変わっていた。
良かれと思ってやることが、不安を生むこともある
物とられ妄想が出てきた時、まず振り返ってみてほしいのは、「最近、必要以上に手を出していないか」ということやった。
できることは、できるだけ本人にやってもらう。
それが、本人の安心感を守ることにもつながっていく。
「おまハン!」と追いかけ回されながら、そんなことを考えてたんよな。